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ルカディア
心優しき少年
 眼下に広がるのは青く美しい色を湛えた母なる海と大小様々な島である。
ルカが住む街、海上都市の名で呼ばれるエランディアには多くの島々が点在しており、大きさだけで言えば群を抜いている。
 
 もっとも、全てに人が住んでいる訳では無いから、人口だけを比べれば普通の街より少ないくらいだ。
 実際飛んでいるのはアルだが、風を切って飛ぶのはやはり気持ちいい。

 相棒もルカの心情を分かっているようでわざわざゆっくりと飛んでくれているのだろう。
 本島が徐々に近付いて来る。エランディアは一つの島に建物が密集していることでも有名であり、当然アルが降りられるような場所は少ない。

 家から近い広場なら或は可能だろうが、そんな場所に着陸する程ルカも馬鹿ではない。
 時計搭の近くは比較的広く、普通の竜なら降りる事が可能だ。ただし、誰か先客が居る場合を除いて。
 
 アルは緩やかに減速すると音を起てることなく、軽やかに降り立つ。ルカを地面に降ろすと銀色の翼を閉じ、再び小さな姿に戻る。そして彼お気に入りの場所であるルカの肩に飛び乗った。

「ありがとう」

『礼など必要ないと常々言っているだろう』

 礼の言葉は何度聞いても慣れることはなくて、思わず顔を逸らしてしまう。アルの様子が面白くて彼に気付かれないよう小さく笑った。

「うん、でも大切なことだから。“ありがとう”って言うのは当たり前だよ」

 そう言って微笑するルカは、思わず笑い返してしまうような太陽に似た暖かい笑みだ。
 エランディアから一度も出たことがない彼は、街の人々を見て育って来たこともあり、人と人の繋がりを大事にする心優しい少年だった。
 ルカの優しさには人も竜もない。彼にとって竜とは友人であり、家族なのだから。

『分かっている。ほら、ゆくぞ』

 ぺしりと軽く尾で叩かれた。余程恥ずかしかったのか、目も合わせてくれない。
 ルカは油断すれば零れそうになる笑いを堪えながら、石畳みを踏み締めるように歩いた。



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あきゅろす。
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