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ルカディア
グラディウス
「ん……、まあ、そうなのかな」

 ルカは曖昧に濁して眼下に広がる砂の海を見つめる。父の影響だと思ったこともなかったからだ。
 砂漠、どこまでも広がる砂の海。確かにアルの言ったように海に見えなくもないが、やはりルカにとって海は透き通った母なる青い海だ。

 アルが作ってくれた風のヴェールのお陰で、細かい砂が飛んで来ることもない。暑いのは暑いが、エランディアで慣れている。ただ、暑さの種類は違うのだが。

『見えたぞ』

 アルの声に反射的に前を見たまでは良かったものの、ルカの目にはどこまでも広がる砂の海しか見えない。
 それはイクセやリリスも同じようだ。怪訝そうな顔で顔を見合わせていた。目を凝らせば、何とか黒い点のようなものが見える気もするが……。

「あれがグラディウス? 何だか雰囲気が違うね」

「俺には黒い点にしか見えないんだけど」

 そんな中、へぇ、と物珍しげな声を上げた人物がいた。ルーアである。どうやら彼にはアルと同じようにグラディウスの街が見えているらしい。竜族は人と比べ、視覚や聴覚が優れているがそれでも度を越している。もしかしたらアルとルーア。二人が特別なのかもしれない。

 黒い点にしか見えなかったものも段々と近付くにつれてはっきりと見えてきた。

 あれがグラディウス。独特な造りの石の家屋に青と白の見目鮮やかな宮殿のようなものまで見える。環境が違えば、人々の住む家や服まで変わると言うが、グラディウスはエランディアやアルストロメリア、アイリス、今まで見たどの街とも違う不思議な雰囲気だ。



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