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ルカディア
とんでもない依頼
「ルカ君に頼みたいことはね、私の故郷のことなの。私とアーヴィンはグラディウスの出身なんだけど……単刀直入に言うわ。ルカ君に歌って欲しいの」

 グラディウスといえばテゲア大陸の南端、砂漠の中にある街だ。
 ルカも『砂漠』について雪と同じで知識として知っているものの、実際に目にしたことはない。アルに言わせれば砂の海らしいが、ルカにしてみれば青い海しか知らないため、想像出来なかった。
 歌って欲しいとリリスは言うが、一体どういうことなのか。

「歌うだけなら構わないですけど、一体どういうことなんですか?」

『神祈祭か?』

 神祈祭と口にしたのはリリスではなく、アルだった。
 祭というからにはエランディア――ルカの故郷の海神祭と似たようなものなのだろうか。

「確かグラディウスは太陽神ソールを奉ってるって聞いたことあるが……」

 口を開いたのは今まで黙っていたイクセだった。
 この世界――アルカディアは唯一神ではなく、地域によって信仰する神が違う。エランディアの民が海神ネレウスを信仰しているように、リリスとアーヴィンの故郷――グラディウスの民は太陽神ソール、イクセの故郷は夜神ノティスを信仰している。

 当然、行われる祭りも街ごとに違うため、神祈祭がどういう物なのかも想像出来ない。
 だが歌と言うのなら、奉納のためなのだろうか。

「そうなのよ。昔、姫巫女がソールに雨乞いをしたことが由来となっているんだけど、今は毎年選ばれた子が歌と祈りを捧げるの。勿論今年も決まってたんだけど……その子が喉を痛めちゃって、とても歌える状況じゃないから代役を探してるの」

「街に代役を出来る子いないの?」

「それなのよ。確かにルーアちゃんの言う通り、代役は考えてあった。けどね、選ばれた子が凄すぎたの。歌もかなり上手いし、顔も可愛いからその子の“代わり”なんて誰もやりたがらないわけ」

 ルーアは可愛いらしく小首を傾げてリリスに問うた。それこそ毎年行われる祭なら代役だっているはず。
 確かにリリスが言うことにも一理ある。そんな人物の代わりなど、誰もやりたがらないだろう。どうしてもその人と比べられてしまうだろうから。

 そこでルカはあることに気付いた。重大な、いや、致命的なことに。ルカの聞き間違いではなければ、リリスは“姫巫女”と言っていた。ならば当然、女でなければいけないはず。

「……あのー、リリスさん。俺、男ですけど。女じゃないと駄目なんじゃないですか?」

「大丈夫よ、バレなきゃ」

 とんでもない一言にルカが固まったの言うまでもない。どこからそんな自信が湧いて来るのだろう。
 ちなみに彼女の答えをある程度予測していたアルはため息をつき、イクセは笑いを堪え、ルーアはただ面白そうに二人を見ていた。




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