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ルカディア
赤髪の美女
 木製の扉を開ければ涼やかな鈴の音が鳴る。
 ギルドに入った途端、様々な酒が混ざった臭いが鼻をつく。何度もギルドに出入りするようになれば、慣れてくる臭いである。ルカも最初は顔をしかめていたが、慣れた今は気にならない。慣れとは恐ろしいものだ。
 案内を終えた青年は律儀に頭を下げてカウンターへ戻っていく。わざわざ探すまでもなくリリスは見つかった。

 何故なら、彼女の燃え盛る炎を思わせる赤い髪と抜群のプロポーションは一際目立っていたからだ。
 ただ、流石にアルストロメリアで見た胸元が大きく開き、大胆にスリットが入った服ではない。体の動きを疎外しないように作られた柔軟性のある服と白いパンツに戦闘向きのブーツ。

 そしてベルトには鞘に収まった二振りのロングソードが差されている。
 唯一あの時と同じなのは、両腕に付けた金の腕輪だけ。今のリリスは受付と言うより、どこから見ても一端の冒険者に見える。

「リリスさん!」

「ルカ君、イクセ。アル君に……えーと、この子は?」

 ルカたちを見て破顔したリリスは、一行の中に見つけた頭一つ以上低い存在に不思議そうな顔をした。
 どうみても十代前半で、二人のように武器を持っている訳でもない。街で遊んでいる子供たちと何ら変わらない少年が何故、ルカたちと共にいるのだろう。そう思ったに違いない。

「あ、はい。彼はルーア、こう見えても俺と同じ魔奏士なんです」

「あら、そうなの。坊や、小さいのに凄いのね」

 少々苦しい紹介のような気もするが、ルーアを紹介するにはこれが一番無難だろう。ルーアの細身の体はどう見ても強そうには見えないし(あくまで見た目の話である)、かと言って人造竜兵と正直に話しても彼女が理解出来るはずもない。

 その点、魔奏士なら細身も何も関係ないのだ。ただし、魔奏士とはただ魔歌が歌える者を指す言葉ではない。攻撃の魔歌だけでなく、回復、補助、魔歌や喪歌について理解していなければ本当の魔奏士とは言えない。

 一応、冒険者と同じくライセンス制度はあるのだが、難関なため殆どの者は取得しない、いや、出来なかった。
 勿論、取得すれば優先的に仕事を回して貰えるなどのメリットはある。ちなみにルカの場合はエランディアから出たことがないため、持っているはずがない。

「立ち話もなんだし、三人とも座って」

 リリスはそう言うと、一行を空いていたテーブル席に案内する。
 座ったのはいいのだが、肝心の話をまだ聞いていない。ルカは早速、話を切り出した。

「あの、リリスさん。受付の人から俺に頼みたいことがあるって聞いて来たんですが……」




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