灰燼すら焼き尽くす焔 「これがさっきのおばさんが言っていた壁ね」 あの後、セラと合流したリンたちは亀裂が入った壁の前にいた。 確かにひびはひびだが、これではちょっとやそっとでは無理だろう。 流石は聖地と謳われる祭壇だけあり、造りはしっかりしている。リンは試しに鞘に入ったままの剣で軽く叩いてみるが、縦に入った亀裂は到底武器で壊せそうもない。 「これは簡単に崩れる物ではないですね。如何致します?」 「私がやりましょう。皆さん、少しだけ離れていて下さい」 セラは三人が一歩下がったことを確かめると右手を掲げた。 常人には聞き取ることの出来ない難解な詠唱がリンの耳に入る。 「――猛き灼熱の抱擁に身を委ねよ。其は灰燼すら焼き尽くす焔。エルファイアー!」 呼び掛けに応え、顕現したのは紅蓮の炎。 オレンジとも赤とも言える鮮烈な色彩を纏う火球は吸い込まれるように壁に衝突した。 音を立てて壁が崩れる。エルファイアーの余波を受けた壁の一部分にはあまりの熱さに溶けている部分があった。 セラ、リン、ケント、セインの四人は頷き合うと祭壇内へと足を踏み入れる。それほど激しい音はしなかった事もあり、ならず者たちも気付いていないようである。 しかし幸か不幸かこの場面に出くわした男がいた。祭壇内の見張りを任されていた彼は一刻を早く仲間に知らせるために身を翻す。 しかしその刹那、セインの手より放たれた槍が男の体を貫いた。 [*前へ][次へ#] |