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の御子

これだけは譲れない
ベルン本軍がどう攻めて来るか、セラには大体の予想がついていた。ベルン竜騎士は大陸最強の名を欲しいままにしている。大陸最強のプライドがあるのだ。
マードック配下の、いや現在では三竜将の一人となったゲイル、そして第四の竜将と謳われたヴァイダが彼の指揮下にある。

彼らを使わない手はない。竜騎士たちがもっとも力を出せるのは奇襲や強襲である。一撃離脱を得意とする彼らに抗うのは難しい。
恐らくは二つの竜騎士隊による時間差攻撃と地上部隊による連携。それで一気に総大将であるロイを討ちにくるはず。

結果はセラの予想通りとなった。ゲイル率いる竜騎士隊がエトルリア軍の本陣を強襲したのだ。
歩兵や騎士隊は地上部隊を抑えているため、本陣には僅かな手勢しか残っていない。
だがそれがセラの策だった。

「放て!!」

本陣に残っていたのは全て弓兵と魔道士兵である。ロイの声とセラの合図によって容赦なく、上空の竜騎士たちに魔法と雨のような矢が放たれた。
個々の力では最強を誇る竜騎士も、矢と魔法の応酬には敵わない。
一人、また一人とうち落とされながらも彼らは止まらない。

一心不乱に敵将を目掛けて突っ込んで行く。我が身をかえりみない、まさに特攻だった。
そんな中をミレディは一人で愛竜と共に飛んでいた。
どうしても、と志願したのだ。困ったような顔をしながらも、セラはミレディにある物を手渡してくれた。

デルフィの守り、と呼ばれるものである。セラによると、翼持つ者の主であるデルフィの加護を受けているらしく、空を翔るものを天敵である矢から守ってくれるという不思議な呪物らしい。
その上、味方の魔法に巻き込まれないようにと魔法の障壁まで張ってくれたのだ。

お陰でミレディは矢と魔法の脅威から逃れることが出来た。
ミレディはただ一つの目的を持って一人でここにいる。弟であるツァイスも一緒に、と言い張ったが、彼はヒースと共に行って貰うことにした。

これだけは譲れない。これはミレディの戦いだ。無数の傷を負いながらも向かってくる竜騎士を倒し、辺りを見回す。
ミレディが身につけている赤い鎧は血に濡れ、愛槍にもかわいた血が付着している。

もう既に何人もの同胞を手にかけていた。彼らは裏切り者であるミレディを目にした途端、こちらに向かって来た。今更、ためらうことなど何もない。何と罵られようが、ギネヴィアに誓ったのだ。



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