嘘でも良いから、好きといって 「いらっしゃいませ」 定員の元気な声が聞こえる。お財布片手にトイレットペーパーを取り、そしてついでに雑誌も取る。あ、ポテチぐらい買っといた方がいいかな。ポテチも持ち、レジに向かい会計を済ませようとした瞬間。 「あ、あれ?名字じゃないですか。で、出たな!」 「アレン君だー」 「あっちに行け」 「ふざけんな。店長呼んで首にしてもらうからな」 「…会計やりますよ」 睨み合い、会計をしてもらう。所々わざとらしいため息が聞こえるのは気のせいだろうか。否、事実だ。アレン君とは何故か仲が悪い。というか向こうが一方的に嫌っているのだ。何、ティキやクロスと私が交流あるからだろうか。 「アレン君、何か私によく突っ掛かるよねー。何で?」 「自分の胸に手を当ててよく考えて下さいよ。ったく貴女は」 「はい?」 「ま、良いです。分からないなら分からないで良いです」 視線を斜め下に落とすアレン君。何だか凄く綺麗で絵になるなー、なんて思いながら袋とお釣りを受けとる。アレン君と友達になりたいのにな、と言えたら良いのだが言えるはずがない。寧ろ言いたくない。だってこんなにも嫌われてるんだし。 「痛い!客にデコピンしないでよ、ウォーカーこの野郎!」 「間抜け面でしたし」 「デコピンしやすかったって?間抜け面で悪かったな」 「はははっ、その間抜け面で僕は大いに悩んでるんです」 はい?どういう意味、と言おうとしたが私の後ろにお客さんが並んでいる事に気がつき、そのままコンビニを出た。アレン君があんなに私を嫌っているとは。ため息をつきながら家までの道のりを歩く。 「あ、猫」 すたすたと私の前を横切る猫。にゃあ、一言。可愛いな、猫。思わず顔が緩む。こんな時にクロスが居たら、「可愛いね」とか「お前の方が可愛い」とか!言いあえたのかもしれない。でも恋人じゃないから無理か。自嘲気味に小さく笑いながら小石を蹴る。 「はぁ」 何故かアレン君に嫌われ、クロスとはよく分からない関係で、ラビとは奇妙な親友関係で、ティキとは一夜の過ちな関係で。私は何故こんなに変な関係を持っているのだろうか。至って普通に暮らしたい性なのにな。ふらふら歩いているといつの間にか自宅に到着していた。 「ただいま」 「おかえりー」 「あれ、ラビ?」 玄関で出迎えてくれたラビ。お前、トイレットペーパーはどうした。疑惑の眼差しでラビを見るとラビは私の荷物を持ちながら笑った。 「予備があったんさ」 「そっか、よかった。あれ、良い匂いがするんだけど」 「クロス先生がなんか凄い事やってて、ま、見れば分かるさ」 リビングに恐る恐る入るとフライパンが炎上していた。その光景はプロの料理人のやるあれの様で、それをクロスがやっているという相乗効果に思わず見惚れる。 「かっこいい」 「だよな」 「やっぱ、私」 クロスの事、死ぬ程好きなんだ。何回も何回も、惚れている。 小さく呟いた私のその言葉にラビは満足そうに笑った。 :) Title→9円ラフォーレ アレン登場 ←→ |