世界はふたつに分かつ
「クロス、なんで急に進路変更しだしたの?巻き戻しの街って面白そうなのになー、ねぇ、なんでなんで?」
「うるさい、殺すぞ」
「ごめんなさい」
深夜、情事の後、巻き戻しの街があると思い出し面白そうだと私が言い出したらクロスは考えこんだ。「どうせ迷信だろ」と嘲笑いながら確かめに行ってみるか?とクロスが珍しく言い出したので今に至る。のだが、目の前まで来て急に止めるという暴挙だ。
「せっかく来たのにー」
「分からねぇのか」
「何に?」
「…この街だよ、街。イノセンスが関係してんの見え見えじゃねーか」
「解決すればいいかと」
「馬鹿言え、教団がもう目につけてんだろどうせ。ほら、名前。とっとホテルに帰るぞ」
「え、クロス、もう朝方だし次の街に進んだほうがいいんじゃないかな」
「疲れた」
「…クロスの仰せのままに」
もう朝になるであろう薄く明るい空を見上げながらクロスの後ろを歩きながら、ポケットの中に入っていた飴を舐める。やけに甘い苺味に思わず顔をしかめながらも、甘い苺の匂いが私とクロスを包んでいて、二人だけの空間になっているという事実に少し優越感。
「次どこいくの?」
「知るか」
「最近クロス冷たいよねぇ。もしかして師匠って呼んで敬語の方が好みだったりした?だったら戻すけど」
「寧ろ敬語で喋るな。敬語は別の時に十分使えるからな」
「別の時?」
「ここで言っていいのか?」
「…!」
顔を赤くしてクロスの髪を引っ張る。些か上機嫌なクロスは笑いながら煙管に火をつけた。
「すみません」
僕が昨日寝静まった頃。やっと深い眠りだった朝方、リナリーと僕には任務を与えられた。巻き戻しの街、という聞くからに奇妙な街だ。三ヶ月前だったら師匠と名前で勝手にアクマを破壊しに行き僕は見ているだけ、のような状況だがリナリーと同じなら話しが違う。連携プレー、今までの僕には未知の領域だ。昼の日差しが目にしみる。
「すみませんじゃない。どうして見失っちゃったの」
「すごく逃げ足早くて…この人。でもほら似顔絵!こんな顔でしたよ」
協力して任務、難しいな。この前の神田とはお互い単独行動だったしな…。似顔絵を見ながらため息をつくしか分からない。この任務、長引きそうだな。
Title→リッタ
←→
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!