ん …小説
150Hit
部活の準備は一年の仕事。
普段通りに準備を始めようとした、けれど。
「利央はやんなくて大丈夫だから、マネジの仕事してこいよ。」
…と、迅に言われた。
それで思い出した。
今、俺は女の子なんだ。
おんにゃのこ
部活が始まった。
始まってわかったことがある。
マネジャーの仕事って意外にキツイ。
選手がプレーをしている時は水分やタオルを用意する、選手が怪我をした時のためにテーピングの道具をつねに持ち歩くなどで結構動き回る。さらにその他の雑用もこなさなければならない。
「っはぁー…疲れた…」
一息ついてグラウンドへ目を向けた。
−−−あ、準さんが投げてる−−−
グラウンドの真ん中で彼は一番輝いている。
彼の目線の先には俺じゃない誰かがいる。捕手として。彼のパートナーとして
−−−ずるいよ。
俺以外の人にその顔を向けないで。
そこは俺の場所なのに。
胸が痛んだ。
男だった時は俺がいた場所に今はいくことができない。
女でいることがこんなにもやもやするなんて思わなかった。
俺は今まで恵まれていたんだね。
どうして俺は女の子になりたいなんて思ったんだろう。
俺が一番大好きなあの人に、一番近い場所を失ってまで得たものはなんなんだろう。
目の前がかすむ。
気持ち悪くなってきた。
−−−立っていられない。
俺は意識を手放した。
誰かが俺の名前を呼んだ、気がした。
−−−−−−−−−−−
(あいつが女だったなら、俺は−−−)
誰かの声を感じる。
(女になればいいのに。そうしたら−−−)
誰?
『あいつ』って、まさか俺の事?
『そうしたら』どうするの?
(俺は−−)
声が小さくなっていく。
待って、もっと話を聞かせて…
その声は答えなかった。
「ん……、」
白い天井が見える。
ここはどこだろう。
「…気がついたかよ。」
声がした方を見るとそこには準さんが腕を組んで立っていた。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!