その仕草がなにより愛しくて(一十木音也)
冷たい手を少し大きめのセーターで包むように優しく握りしめるおなまえ。
スゴく女の子らしいなーって思う。
って、今はこんなこと考えてる場合じゃないぞ俺。
早乙女学園は突如来た巨大地震に緊迫した雰囲気を漂わせてすごくピリピリしている。
みんな、余裕がないのか笑顔も見られない。
そういう俺だって尋常じゃないくらいにいまパニクってる。
「音也くん」
「ん?」
「あのね」
ぽんぽん
「え?」
おなまえが一生懸命背伸びをして
俺の頭を撫でてくれる
「どうしたの、おなまえ?」
「あ…笑った」
嬉しそうに笑ったおなまえに胸が締め付けられる感覚
甘酸っぱいようなくすぐったいような
「さっきまで笑顔…無かったから」
「おなまえ…ありがとう…」
恐怖で
笑うこと忘れてた、俺
「ううん…音也くんの笑った顔、好きだから」
ね、笑おうよ
哀しい顔は君には似合わないよ
だから、笑お。笑お。
そしたら幸せきっと来るから。
*まえつぎ#
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