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続き物
I
にんまり、と満足げな表情の三坂が視界に入る。アイツの隣には聡
聡はもちろん不機嫌なオーラを隠すことなくそっぽを向いている。
なんで…こんなことに…。

そして俺の席は…


「なんだ、この席順…」

「お前…運悪いな…」

「お、大鳥こそ人のこと言えないだろ!?」


運が悪いのか良いのかみょうじの隣になった。



「あり得ない。」

「は?」


いつものように三人で帰っていると聡がいつもでは出ないような低い声で「あり得ない。」ともう一度呟いた。


「どうした?…駒澤…顔がなんか怖いぞ?」


怖いとは口で言いながらも心配したような表情のみょうじ。


「みょうじ…」


ぎゅう、とみょうじの手を握りしめる聡…って…


「おい!」

「な、駒澤!?…私、何も隠し事は…」

「違うよ、みょうじ僕のこと心配してくれたでしょ?嬉しくて…」


無視か、このやろー


「そりゃ、駒澤…いつも笑顔だから…何かあったのかもって…」

「ふふ、ただ席順に納得いかなかっただけだよ、心配しないで」

「……そっか、なら良かった。」

何コイツら良い雰囲気になっちゃってんの!?


「ありがと、みょうじ。」

「聡、ベタベタしすぎなんじゃねーの?」

遂に我慢出来なくなってみょうじの手から聡の手をぱしりと払い除ける。


「なに?別に嫌がってるわけじゃないじゃん。」

「そういう問題かよ」

「僕はそう思うよ、好きな人に触れたいと思うのは当たり前じゃないか。」

「ああ、そうか、聡はみょうじ大好きだもんな。なら、仕方ないな」

真面目に返してくる聡に無性に腹がたって、嘲笑うように言葉を並べる。なのに、聡は一度も言い淀んだりしない。


「そうだよ、僕はみょうじが好きだ。だから、ハルキに何か言われる筋合いは無いね。」

「はっ、そうかよ」

「なっ、なあ…大鳥…駒澤…」

「聞いただろ?聡はお前が好きだって」

「だ、だからってなんでお前らがケンカ…」

「はは…ハルキいい加減認めたら?」

「は?」


西日が差す通学路
人気のない道に大鳥の声が静かに響いた。


「本当は気づいてるんじゃない?」

「何のことだよ…。」

「ハルキはみょうじが好きなんだ。」「それはお前だろ…」

「そう?そういう割にはハルキ眉間に皺よってるけど」


不敵に笑う聡に困ったような、泣きそうな顔をするみょうじ。


「みょうじ、もう暗いから帰ろう。」

「え…でも…大鳥…」

「いいから」


さっきまで出ていた夕日はすっかり姿が見えなくなって辺りは暗闇に包まれている。

とぼとぼと重い足取りで帰路を歩けば
俺の脳裏に流れたのは聡の言葉
俺がみょうじを?
三坂と同じこと言いやがって…
そんなはずねーのに
そもそも好きってなんだよ?
ああ…くそ…


考えるのが嫌になって
ぎゅっと踏み込んで夜の道を駆ける。


ああ、もう!
本当になんなんだよ!

*まえつぎ#

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