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続き物
G
カリカリと鉛筆で織田信長についてノートに書いていると
前の席から小さく畳まれた紙を渡される。

中には
藤堂さんからのメッセージが書いてあった。


駒澤から
詳しい日にち聞いた!
二辻小前のバス停に12時集合な。


藤堂小夜子


綺麗に畳みなおして
筆箱のポケットに入れる。
鉛筆を握る手にぎゅっと力がこもった。


「行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」


がちゃりとドアを開く
燦々と太陽が照っていて花と木々に付いた朝露がキラキラと光る。
バス停まで歩いて10分
そこには藤堂さんたちが既に着いていた。


「あ、おはよ、なまえ」

「お、おはよう」

「可愛い格好だねー」

「あ、ありがとう…。」


な、なな!
大鳥たちと話してるときとはぜんっぜん違う!
なんなんだよ!自分!気持ちわるっ!


「朝希も…挨拶…って…」


藤堂さんが朝希さんを見て顔をひきつらせる。


「あらら…まだ、行かないなんて言ってるよ…」

「え…?」

「朝希って変なとこ頑固でさー」

「ちかちゃん…元気だしてー??」

「…うん…ごめんね、なまえちゃん…こんなところ見せちゃって…」

「え!?い、いや…ぜんぜん!!」

「……」


だ、だだだ黙っちまった!?
な、なんか悪いこと言ったかなー!??


「意味わかんないよ…なまえちゃんがクラスで浮く理由が…」

「え…」

「あ、朝希…」

「私は…私はなまえちゃんを見てるだけなんてもう嫌」

「え…あ、あの…」

「原因は…あの子、だよね。大丈夫…一緒に居よう。そしたら怖くないよ。」


にっ、と
どこか大鳥に似た笑顔を朝希さんがする。
なんて優しいんだろう…この子は。


「でも…朝希さんたちに迷惑が…」

「迷惑なんかじゃないよ、好きでやりたいんだ。」

「まったく、朝希は…って私も賛成だけどね…美結は?」

「うん…もちろん!」

「……ありがとう。」


ふわりと
笑って泣いて
そう言ったなまえちゃん
もう、辛い目になんか合わせない。
きっとひとりは誰だって寂しくて不安で恐いから。


「泣くなよなー」

「はい、なまえちゃんハンカチ使って?」

「ありがとう…玉村さん…」

「美結が…いいな…駄目…かな…?」

「み、美結…ありがとう…」

「…うん!」


ぱあっと花を咲かせるように笑った玉村さん…美結はすごく可愛いくて、暖かくて
どうしてこんなに優しく笑えるんだろう…って
私もこんなに笑えたら大鳥にあんなこと言われなかったのかな…
大鳥に言われた言葉を思い出してずきりと胸が痛くなった。
アイツに言われるとすごく傷つくのはなんでだろう…。


会場につくまでの時間
たくさん話して笑って
いつの間にか目的地についてた。


「駒澤が入口で待っててくれるって言ってた。」

「優しいねー駒澤くん」

「うん。」

「なあ、小夜は駒澤が好きなのか?」


何気なく思ったことを聞いてみる。
もちろん小声で


「なっ…んなわけ…」

「小夜、顔真っ赤だぞ。」

「っ……」

「私、応援する、小夜と駒澤のこと…」

「……ありがとう。なまえは大鳥か?」

「は?…なんで?」

「あれ…無意識か?」

「む、無意識も何も私は…」

「はいはい…ほら駒澤がいるから後でね。」

「う…さ、小夜ー!」


私にお、大鳥!?
な、なんで!?
べつに大鳥なんか…
大鳥なんかより片山さんの方が大人で格好いいし…なんで…大鳥?


「みょうじ!来てくれたんだ!」

「え…ああ…うん。」

「……みょうじ、今日頑張るから応援してて?」

「ああ…うん?あ!小夜たちと一緒に応援するよ!なっ?小夜!!」

「えっ…あ…うん。」

「みょうじと藤堂…仲良くなったんだ!良かった!」

「おう」

「嬉しいな、ありがとう藤堂。」


そう駒澤がにこりと笑えばじわりと赤くなる小夜の頬。
可愛い…駒澤はいつ気づいてあげるんだろう、小夜の想いに。


「コーチ、この前言ってたクラスの子達連れてきました。」

「ん?…おお!なまえちゃんも来てくれたんだ!」

「片山さん…この前はごめんなさい!」

「え?いいよいいよ、仕方ないしね。」

「あ…ありがとうございます…。」


やっぱり片山さんはカッコイイ…大鳥なんかと全然違う。
大人の人。


「ハルキ!」

「なんだよー?コーチ?」

「なまえちゃんが来てくれたぞ。」


ぼそっと俺の耳元で囁いたコーチに「は?」と返せば、ウザくらいに眩しい笑顔がかわりに返ってきた。


「なんか今日はいつもより楽しそうだし、お前も嬉しくなるだろ。」

「いや、別に」

「誤魔化すなよー…しかし、早くしないと聡に取られるぞ?」

「だから…俺は…」

「よしよし、そーいうことにしておいてやる。年頃だもんなー」


わしゃわしゃと俺の頭を撫でて(乱して)いくだけして対戦相手のコーチだか監督のもとへと走っていったコーチ
何が年頃だ、俺は別にみょうじなんか好きじゃねえのに
でも、確かに
少しだけ
少しだけ…だけど
アイツが笑ってると
嬉しそうだと俺も嬉しいんだ。



(その笑顔に触れてみたい…なんておかしいよな。)

*まえつぎ#

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