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続き物
A
女子トイレで
必死に卵の黄身を落とす。
だけどそれはクリーム色になるだけで落ちてはくれなかった。
「そんなんだからいつも一人なんだよ。」大鳥の言ったことばが頭の中でリピートする。
確かに大鳥の言う通りなのかもしれない。
いつも一人…気づけば一緒にいた子たちは私から距離をおいていた。
何かワルいことをしたのかもしれないと思っても今更聞けなくて。
本当なら私だってみんなと遊んだり喋ったり……笑いたい。
ぐるぐると嫌な気持ちが頭を支配して気持ち悪くなる。
ぐしゃぐしゃになった顔をタオルでゴシゴシと拭く。


「ヒドイ顔…。」


教室に足を運べば
突き刺さる一部の女子の視線
知らないフリをして自分の席につく
授業の始まるほんの数十分間だけなのにそれが堪らなく苦痛だったりする。
どうしてこんなにも自分は疎外されているんだろう。そうやって答もわからない疑問を毎日持ち続けて生きるなんて
アホらしい。
早く…早く家に帰りたい…。
この孤独から抜け出せる私の唯一の場所


「みょうじ」


物思いに耽っていたら
突然聞こえた声

「…っあ、なに?」


学校で話しかけられるなんて
久しぶりで若干声が裏返った。


「さっきはごめん。」

「別に駒澤は悪くない…。」

「…へへっ、…うん、でも悪いからさ…今日一日は僕の上着着てて。」

「え…。」


そういって渡されたのは今さっきまで駒澤が着てた上着で。
握らされたそれは暖かくて。


「でも…駒澤が…。」

「僕なら大丈夫だから。じゃあ…」


それだけ言うと男子の群れに入っていく駒澤。


暫く持って見つめてたけど、なんだか着なきゃ駒澤の親切を拒否ってるみたいで嫌だから結局着ることにした。
卵のシミは綺麗に隠れてくれた。


「はい、席についてー転入生を紹介します。」


先生が陣明薫と綺麗な字で黒板に書く。
切れ長の鋭い目
女の子がほっとかないんだろうな。
そんな彼は私の隣に座る。

先生が居なくなると
女の子は陣明の周りに群がる。
そして一人の少女が私の耳に口を近づける。

「私…なまえちゃんの席に座りたいな。」

「………」


彼女はにこにこと笑う。女の子ほど怖い生物はいない…特に彼女は。
黙って立ち上がればにこり、と笑ってありがとう。
さて、どこに行こうか…。



みょうじに上着を渡すとみょうじは困った顔でそれを受け取った。(半ば無理矢理に押し付けたけど)
「駒澤」僕の名字をみょうじが口に出した、ただそれだけなのにどうしようもないくらいに嬉しくなった。
本鈴がなって先生が入ってくると隣には一人の男子、ハルキが嫌そうなタイプ。…と言うことは女子にモテるイケメン
みょうじをちらりと見れば興味が無さそうに見ていた。
ほっと安堵のため息をつく、……でも、次が問題だった。みょうじの隣の席にすとんと腰を下ろした陣明……敵にならないことを祈ろう。
みょうじが席を立ち上がる、かわりに座ったのは僕の嫌いな女子だった。
アイツがきっとみょうじを苦しめてる。
そう思ったら無性にみょうじが恋しくなった。
ハルキを見れば眉間に皺が寄っていた、ハルキは気づいてないけど無意識にみょうじを気にしてる、カッコよさをいつでも追求するハルキがみょうじの前じゃ途端に変わる。だけど、僕は知ってても教えない
敵は出来れば増やしたくないからね。
みょうじはただでさえ可愛いから競争率高いのにハルキが加わったら面倒くさくなるから。
ごめんね、ハルキ
僕はみょうじが好きだから
こんな親友でごめん。

*まえつぎ#

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