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veryshort
翔と春歌
「だーかーらーっ!」


綺麗に流れていた
ななしちゃんと翔くんの声
ヘッドホンから聴こえていた二人のハーモニーはななしちゃんの怒声によって掻き消されてしまいました。
ななしちゃんの声は綺麗なソプラノなのですがキーンとした高音が私の耳に残ります。ななしちゃんの感情が高ぶっている証拠です。


「あんたがここで強くうたうと歌のイメージが違っちゃうじゃない!」

「お前こそ『だいすき』って優しく言うものなのか!?」

「『だいすき』って好きな人に対してでしょ!?優しく歌うに決まってるじゃない!」


成る程…どうやらお二人の『だいすき』に対してのイメージが違うみたいです。
お互いに大好きなはずなのに…何故でしょう??
いいえ、きっとお互いに大好きだから。
音楽に真剣だから。
違ってしまうんでしょう…。
ですが…これはさすがに…


「ストップ」


あ…
思ったより声が低く出てしまいました。
でもお二人の目線がこちらに向いているので今がチャンスですね。


「お二人の意見はわかりますが…まずは好きなようにやってみてはいかがでしょう?」

「好きなように?」


ななしちゃんと翔くんの声が重なります。
二人の声にこくりと頷けば納得の行かないようなお二人の表情


「それじゃあ行きます。」


ななしちゃんの声が入って翔くんの声が力強く重なって
問題のフレーズに入ります。お二人の歌い方は全く違っていてだけど不思議と綺麗にハモって二人の声帯から出る音が気持ちよく耳に響きます。


「素晴らしいです。これなら優勝できます!」

「不思議…ハルの言う通りにやったら綺麗にハモった。」

「ああ…全然違うのに…」

「ハルはやっぱりスゴいよ!」

「いいえ…お二人が通じあっているからです。見えない…何かに…。」


にこっと笑えば
照れたように顔を見合わせる翔くんとななしちゃん。
早乙女先生のお顔がちらりと浮かんで何かに…なんて言ってしまいましたがお二人はきっとわかってくれたのでしょう。


「でも…やっぱりハルのおかげだよ。」

「そうだな、お前はやっぱり良い作曲家だ。」

「それにハルが言ってくれなかったら、コイツ…翔ともわかりあえないままだったし。ね?」

「おう、珍しく気が合うな。」

「ふふ…そう言ってもらえて嬉しいです。」



さあ、お二人の音楽を今度は皆さんに響かせましょう。

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