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シリーズ
−G

思考が着いていかない現実の展開に思わず遠くを見つめる僕の視界の中で、キツネがニヤリ、と一陣さんに笑いかけたのが見え、はっ、と気を持ち直す。

「先々月の『赤』との件。貸し一つ、でしたよねー?」
「っ、」

ポツリ、と呟いたキツネの言葉に、もう一度怒鳴ろうと肩を怒らせていた一陣さんの背中がピクリと、反応した。

「忘れたとは、言わせませんよぉ・・・」

ふっふっふ・・・とまだ後ろを向いたままの一陣さんの背に、悪代官のような笑いを含ませ声をかけたキツネの顔は、ニンマリと笑っていて。

「テメェ・・・」
「まぁまぁ、持ちつもたれつ、でしょ?」

振り返った一陣さんの顔を見返すキツネの顔は、先程と違う、どこか柔らかさを感じる笑みをふわりと浮かべていて。
その顔をぐっと睨みつけた一陣さんだったが。
次の瞬間にはあきらめたように視線を外して、そのままの視線の強さで今度は僕を値踏みするように睨みつけてきた。

こ、怖い・・・!!
僕、何もしてないのに・・・!

「キ、キツネ、そんな、僕、その、め、迷惑だろうから、」
「じゃあこれ、雨の荷物!」

やっとのことで絞り出せた震える声で反論しようとするも、そんな僕をまるで無視するように、キツネは足元に置いてあった僕のボストンバックを放りなげた。

よ、よりにも寄って一陣さん目掛けて…!!

ヒイイイ!と内心叫び声をあげ固まる僕に、キツネはやっぱり笑顔のままで。

「じゃ、がんばってね、雨!」

と、にっこり笑いながら僕の肩を軽く叩くキツネに、僕はふと、キツネの名前の由来がわかったような気がした。


そうかキツネって、人をだまくらかしたり、うまく言いくるめたりするのが得意だから。


たぶんそこから来てるんだろうなぁ、と直観だけれども、たぶん正解だろうという変な確信感をぼんやり感じていたその思考は、間違いなく、この信じられない現実からの逃避だったに違いない。




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