シリーズ A 「アァ?まった、きれいな顔のにーちゃんがやってきたなぁ?」 「そのお綺麗な顔崩されたくなかったら、出ていきな!」 「王子気どりは、その顔だけにしろよなぁ!」 ギャハハハ!と、下品な声が路地裏に響く。 毎度のことだが、このような三下共には、罵声についてなにかマニュアルの様なものがあるのだろうか。 皆、個性のない、似たようなことしか言わないことに呆れる。 私は自分の容姿に興味はないが、特異なものであることは自覚している。 一目で純粋な日本人じゃないとわかる、ヘーゼルの瞳に栗色の髪、そして白い肌。 全体的に色素が薄く、それも私がクオーターであるせいである。 先祖帰りでもしたのか、日本人離れした容姿。 そしてよく言われるのが、『現代によみがえった中世の王子様のような美貌』。 容姿にとらわれるなどくだらないと思うが、婦女子やある一定の男子には好ましい顔なのだという。 この容姿のせいで幾つの面倒事に襲われたことか。 女のように見えるものではないことが救いだが、日本男子としては口惜しいことである。 しかしながら、この容姿のお陰で、多くの馬鹿どもが油断をするのが滑稽だ。 「怪我をしたくなければ、退け。さもなければ、それなりの行動をとらせてもらう」 「はぁ?なに?いみわかんねーんだけどぉー」 「めんどくせぇなぁ・・・てめぇも、ついでにヤっていいんだぜ」 「金持ってそうだしなぁ・・・・」 「じゃあ、とりあえず・・・死ねよ!」 右方にいた男が、大きく振りかぶって殴りかかってくる。 大ぶりすぎて、隙だらけだ。 その腕をかわし、空いた胴体に右足を蹴りいれた。 思いきり吹き飛ぶその体が、驚いた顔でそれを見ていた別の男を巻き込み、仲良く床に沈む。 あっけに取られながらそれを見ていた他の男たちも、とたんに怒りに顔をゆがませて、奇声をあげてこちらへと殴りかかってきた。 脇腹あたりを狙って伸びてきたナイフを持った手を、手首を掴んでひねり、そのままそこを軸に背負い投げの要領で投げ飛ばす。 そのすきを狙って背後から殴り掛ってきた男には、踵から回し蹴りを顎に叩きいれる。 そのまま、驚きで立ち止まっていた別の男の懐に飛び込み、鳩尾に肘を入れる。 その衝撃に曲がった体に、その襟をつかんで別の男がいる方向へと思いきり放り投げた。 一瞬にして、男たちの数は半分以下になる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |