シリーズ とある男の初恋@ 当たりも薄暗くなってきた夕暮れ時。 私、神宮寺玲爾(じんぐうじ れいじ)は、日々の日課である、路地の見回りを行っていた。 自分の育った街であるここは、色を冠したチームの争いが絶えない地域でもある。 少し悪ぶりたい学生の集まりから、警察や自治体もなかなか手が出せないほどに力をつけたものまで、その存在は様々だ。 その中で、それらのチームによってこの地域が乱されるのを嫌い、自ら立ち上げた組織が”警邏隊”である。 風紀を乱す者を見つけ次第、制裁を行う。 この街を守るための、有志による組織だ。 腹立たしいことに、それはときには他のチームと同じように”白”と色で呼ばれることがあるが、まぁ、清廉な色である白を冠しているのだから見逃すことにしている。 自分の住む街が、好きだ。 住む人がおり、遊ぶ場所があり、学ぶ場所があり。 有名な地域ではないが、それでも自分が生き、育った場所。 愛着がわくのも当たり前だと、自分は思う。 だからこそ。 その場所を荒らすも物がいれば、私は守るために全力で戦うと誓っているのだ。 事件が起こりやすい路地裏を中心に、見まわっていると、路地裏の奥から人の言い争う声が風に乗って耳に届いた。 微かな音だったが、それでも険悪な雰囲気が伝わってくる。 聞こえてきた路地へと顔を向け、眉間に力を入れた。 まったくもって、争いが絶えない。 「・・・下種が」 取り返しのつかないことになっていなければいいが。 フッ、と人を吐き、路地裏へと体を滑り込ませた。 「おい、何をやっている」 声をたどった先の路地の袋小路にいたのは、幾人かのガラの悪そうな男たち。 そして、蒼い顔をして震える、男。 腕を組みながら、青ざめた男を取り囲む男たちの顔を順繰りに睨みつける。 「念のために確認するが、お前たち、その男に何をしようとしているんだ」 見てすぐにわかることだが、間違いが怒ってはいけない。 制裁を行う前には、念のために確認をとることにしている。 まぁ、この確認が意味を為したことはない、が。 [*前へ][次へ#] [戻る] |