シリーズ
−R
結局、全身をトータルコーディネートされてしまった・・・。
僕は心なしか重い体を引きずりながら、零時さんの後ろをとぼとぼと歩く。
結局あのあと、靴からベルトなんかもすべて揃えられてしまい。
・・・この重さは、お金の重さだ・・・。
金額を考えると、益々足が重くなりそうなのでなるべく考えないようにする。
確かに高い服なだけあって生地もしっかりしてるし、機能性がいいうえに、デザインもカッコイイ。
けれど、零時さんみたいな人が着るならまだしも、僕みたいな人間が着ちゃあ、服も浮かばれないだろうになぁ・・・と思ってしまう。
そのうえ、零時さんが着るには少しデザインが幼いし、サイズが小さいので、どうがんばっても零時さんに着回すこともできないわけで。
僕は、ただただため息をつくことしかできない。
なんで零時さんは、僕なんかにこんな無駄遣いをするんだろうか・・・。
ふと、地面に映った零時さんの影が止まったのを見て、僕も歩みを止めて顔をあげる。
挙げた顔の先には、さっき一瞬見た、困った顔をした零時さんがいて。
僕は、零時さんがそんな表情をする理由が分からず、声をかけた。
「どうしたんですか、零時さん?」
「・・・お前さ、嫌なのか?ソレ。」
「ソレ?」
「今日、色々買っただろ。・・・気に入らなかったのか?」
「あ・・・」
そうだ、零時さんは買ってくれたのに。
僕はお礼も言わずに、ため息ばっかりついて。
なんて、失礼なことを・・・!
僕はあわてて、零時さんに頭を下げた。
「ごめんなさい零時さん!いろいろ買ってくださって、ありがとうございました・・・っ」
「・・・・・・いや・・・そうじゃ、ねぇんだ、けど、」
「・・・え?」
珍しく口ごもらせた零時さんの顔を、下げていた頭をあげて見上げる。
困ったような、悩んでいるような、なんだか複雑な顔をして僕を見つめている零時さんと目が合う。
僕が首をかしげて見せると、零時さんはむっつりと口を曲げて、目をそらしてしまった。
僕の不作法さにあきれてしまったのだろうか・・・こんな、失礼な態度をとってちゃ当たり前だけど・・・
出かけるの、楽しみにしてたのになぁ・・・。
僕は内心泣きたいような気持ちで、ぐっと両手を握りしめた。
突然。
その手をふわり、と温かいものが包む。
驚いて自分の手をみると、そこには僕の貧相な手と対照的な、しっかりとした大きな手が絡まって。
そのままその腕をたどると、そっぽを向いた零時さんの頭にぶちあたった。
「・・・人、増えてきたから。迷子になるんじゃねぇぞ。メンド臭ぇ。」
ぐい、と引かれるままに歩き出す。
零時さんは全く振り向いてはくれなかったけれど。
僕はつながった手から伝わってくる零時さんの温度に、しょげていた心があったかくなる気がして。
「っ、はい!」
僕は最近よく感じる、頬が緩む感覚に身をまかせつつ、こっそり。
ほんの少しだけ、その大きな温かい手を握り返した。
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