シリーズ −E 「コラコラ零さん。僕の友達脅さないでくださいよ〜」 明るい声を出しながら、隣にいたキツネが笑顔でぎゅ、と抱きついてきて。 その抱きついてきた腕が、なだめるようにそっと震える僕の背中を撫でていき、温かいその感触に少しだけ体から力を抜くことができた。 「友達?」 「兄ちゃん達がいなくて淋しかったんで、ナンパしてきたんですよー。」 「どこのグループのヤツだ」 「聞いて驚く勿れ。超絶一般人です」 「・・・・テメェ、また拾ってきやがったな。」 ギリ、と視線を強める一陣さんに、キツネはそっぽを向いて口笛を吹く真似をした。 ほんとキツネって、何者・・・!? あの視線を受けて、平然としてられるなんて・・・! 「だって、どっかの下っ端に絡まれてたから」 「一人で拾ってきたのか!?」 「あたりきまえよ!なに?心配しちゃった??てへへ!」 「わかった、とりあえずテメェは一遍死んでこい。お前に何があっても俺はどうでもいいが、双子が暴れんだよ!無差別に!」 「いやー、愛されてますよねー、僕。」 怒鳴る一陣さんに、飄々とした雰囲気で言い返すキツネ。 そんな柳のような返答に、一陣さんは苛立ったように髪をかき回して。 「毎回毎回テメェはよぉ・・・!」 「零さんには迷惑かけてないじゃないっすかー」 「この間の犬だって・・・、そういや、アイツ結局どうしたんだよ」 「銀は結局、黒さんとこにおいてもらうことになりました。ハイ。」 「・・・黒んとこに置かせたのか・・・お前、ほんといつか黒に利子付けて返されんぞ。」 「黒さん、そんなことしませーん。優しいもーん。」 「・・・ほんと、双子苦労するな。そこだけは同情するぜ」 二人の会話の中で出てきた名前に、また体が震える。 たぶんここで話される黒って、あの、黒だよな・・・。 ヤクザともパイプがあるっていうか、寧ろ子飼いのヤクザがいると噂の、この街で一番かかわっちゃいけないチームの、黒、だよな。 トップの名前は誰にも知られてなくて、チームと同じ色で呼ばれている。 つまり彼らの話す『黒』とは、おそらくトップのことで。 同じチームトップの一陣さんが知り合いなのはわかるけど、ほんと何者なのキツネ・・・! ぶるぶると震える僕に、ふと、キツネの視線向いた。 真ん丸い目でじつ、と僕を見つめて、次は一陣さんを見る。 そしてまた僕に視線を移してにっこり笑ったので、僕も思わずつられて、心中疑問符を浮かべながらもにっこり笑い返した。 しかし次のキツネの言葉に、僕はその笑顔のまま凍りつく。 「雨、零さんトコに、お世話になるといいよ!」 何 故 に 。 [*前へ][次へ#] [戻る] |