シリーズ とあるカップルの危機@ 起きたら、虫の死骸に囲まれてました。 たぶん僕の心臓は、一回止まったと思う。 思いっきり目を見開いて、息を肺いっぱいに吸って準備した。 そして。 「ぎゃああああああああ!!!!!!」 こんな目覚めいやだいやだと思いながらも、これが僕、五月雨(サツキ アメ)の日常だ。 「うっうっ・・・震えが・・・震えが止まらない・・・」 ぶるぶると細かく震える自分の手を、涙目で見つめる僕に、同室の三上新(ミカミ アラタ)は呆れ眼になってため息をついた。 「だから、窓は閉めろって言っただろ?」 「だ、だって、なんかちょっと暑くて・・・」 「クーラーかけりゃあいいじゃんか。」 「クーラー使うと、次の日だるくてしょうがないんだもん・・・」 あっそー、とそっぽを向いてしまった新に、僕はあわてて頭を下げる。 「ごめんね新!次からは、ちゃんと気をつけるから!迷惑かけないから!」 「いやもう、別にいいけどさ・・・」 目線を合わせないまま言われた言葉に、僕の心は沈む。 新にまで見捨てられちゃったら、ほんと泣ける・・・。 新は僕のたった一人の友達なのに。 僕はさっきとは違う理由で涙目になりながら、新に縋る。 「ほんとごめんね!今度は、大声も出さないし、助けも求めないようにする・・・!」 「いや、ちょ、おま、何勘違いして」 「オイ、何朝っぱらからいちゃいちゃしてんだよ、あぁ?」 突然頭上から降ってきた低い声に、僕の体は文字通り飛び上がった。 百パーセント機嫌が悪いのだろうその声は凄く怖かったけれど、それよりなによりこの声は、僕の心を一気に浮き立たせるのだ。 僕は嬉しさでゆるみきった満面の笑みで、背後を振り返った。 「零時さん!」 「・・・よお。」 僕の背後にいたのは、誰もが振り返る美形。 だるそうにポケットに両手を突っ込み、睨みつけるような視線で僕を見ているその美形こそ、この辺一帯を仕切るチームの総長、一陣零時(イチジン ゼロトキ)さんだ。 真黒な短めの髪を軽く立たせ、同色の瞳は切れ長の二重。 ピアスをいくつも開けているが、それが彼の色気を倍増させている。 190センチ近い長身で、長い手足とがっしりした体格は、そのめったに見れるレベルじゃない顔とあいまって、なんの変哲もない男子校の廊下がまるでモデルのステージのように見えた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |