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番外編
−A

「できた?」

東山が無言で救急セットを片付け始めたのを見て、僕はのっそりと起き上がった。
自然とまくりあげていた服が下りて、腹の痣が隠れる。
ゆっくりと立ち上がると、僕は腕まくりをしつつキッチンに向かった。
キッチンに置いてあるエプロンをつけて、応急セットを片付け終わった東山を振り返り。

「今日はなにがいいん?」
「肉。」

またか。
この肉食獣め!

毎日手当てをしてくれる東山に、お礼の気持ちも込めて僕は毎日東山に夕食を作っている。
基本的に夕食は自炊派の僕なので、リクエストがあるのは助かるし、量が増えても逆に一人分作るほうが面倒だったりするので、全然負担はない。
むしろ、一人の食卓は非常にさみしかったから、あまり会話は弾まないとはいえ、誰かと一緒の食卓は僕にとっても願ったりかなったりで。

先日作った僕の手料理を、どうやら東山は気に入ってくれたらしい。
あれから、僕の残り物タッパーの中身の減りが早くなった。
後で食べようと思ったものが、消える消える。
僕は東山が僕の料理を食べてくれるのがうれしかったから、かまわなかったんだけど。
けど、空のタッパーを見つけだしている僕を発見すると、東山がかわいそうなくらいうろたえるので、僕は手当てのお礼として、料理を提案したのだ。
そんなにうろたえるなら、食べなきゃいいのにね。
別に食べてもいいよーって言っといても、僕がその空っぽのタッパーを洗っていると、こっそりと近づいてくる。
その様が、まるで子供が悪戯をした時に「僕がやりました」と自首するかのように、母親に近づいてくる様子に似ていて。
気付かないふりして、その東山の様子を楽しむのが最近の僕の日常だ。


あぁ、もう憎めないなぁ。


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あきゅろす。
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