4-25 「こ、高校が・・・同じなん、です、」 かすれた声で、一実が言葉を絞り出す。 その顔は、苦しげに歪んでいて。 一実は一瞬僕の方を泣きそうな表情で見て、すぐにうつむいてしまった。 一瞬しか、目が合わなかった。 なんだかその様子が、僕の視線から逃げるように見えて。 僕からそむける様に俯いたその姿に、思わず名前を呼んでしまいそうに、なった。 「へぇ、高校、なァ」 そんな僕たちと反対に、一方の黒さんは僕も一実もみないままに、少し俯きがちに楽しげに笑って。 口元を歪めるだけの、笑顔とも呼べないような表情の変化だったけれども、今までの付き合いでわかります。 わかりますよ。 今、この人・・・めっちゃご機嫌なんですけど・・・! 「・・・なにか?」 なんだかむしゃくしゃした気分で、むっすりと顔をしかめて見せながら黒さんを見れば、真っ赤な瞳がまっすぐにこちらを向いた。 薄暗い室内だったけれども、石みたいな硬質な瞳が、縫いとめる様に無表情に僕を映したのが、何故だかわかって。 首の後ろのあたりが、総毛立った。 胸のあたりが苦しくなって、わけのわからない焦りや震えで、身じろぎすらできなくなる。 息ぐるしい。ひゅ、っと喉の奥で息が詰まるのがわかった。 微かに、足も震える。 まるで、黒さんの視線に全部が支配されているように。 (こういうときに、思いだすよ。・・・僕なんかが、敵う相手じゃないんだって、さ、) 先ほどまでの少し緩めていた気分が、一気に凍ったように固まり、足もとが覚束なくなるような幻覚に襲われる。 けれど、そんな黒さんの空気に溺れ、沈みそうになっていた僕を、雰囲気をぶち壊すゆるりとした声が掬いあげてくれた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |