4-24 「・・・な、な、・・・」 お互い指をさしあって、絶句するしかない。 予想もしない顔が、予想もしない場所にあれば、僕だって動揺の一つや二つあるってーの! 一言目が出てこない僕らの間に、響いた声。 「知り合いか」 硬質な中にもどこか楽しげな雰囲気を忍ばせた黒さんの声に、僕ははっと、一実はギクリと身をすくませつつ、黒さんへと視線を移した。 指しあっていた指をゆっくりと頭にもっていき、なんとなくその指で頭をかく。 一実が”黒”のメンバーであるのは、ほぼ間違いないだろう。 一実が黒でどんな位置にいるのかわからないから、どこまで関係を開示するべきかがわからない。 正直僕は、黒さんにも本名を言っていない。 まぁ、本名を知られたからなんだというもんじゃないんだろうけど。 でも、なぁ。 (なんか、黒さんにいろいろ知られるとやばい感じがするんだよ、な) この世界に首を突っ込むとなった時から、出来る限り自分の身は自分で守ると決めている。 自己責任、自己責任。 それに首を突っ込むとしても、地元で片付く、若さゆえの遊び程度で考えているのだ。 でも、黒さんについては。 黒さんに深入りすると、危険な気がするのだ。 ふとした瞬間に、体が固まるような黒さんの強い視線を感じる時がある。 捕まったら、二度と逃げられないような。 引き寄せられたら、二度と戻れないような。 黒さんが僕をどこに連れて行こうとしているのかは、わからない。 けれどそれがどこであろうが、僕はまだそんな覚悟はしていないし、するつもりも今はない。 でもその視線は、黒さんが僕のことを知るたびに、拘束力を強くしていくから。 正直、怖い。 取り返しのつかないことになりそうで、怖いのだ。 (・・・だから、なるべく知られたくない) 目をそらしつつむっつりと考え込んでいると、息をのむ音が聞こえた。 そちらへ向けば、黒さんが一実をじっと見ていて。 おいおい、どんな眼力だよ。 一実、緊張死んじゃうよ。 まるで蛇に睨まれた蛙のように、一実は自分を見つめてくる黒さんの視線に体をこわばらせて。 段々と、顔色も悪くなっていく。 そりゃそうだよ。黒さんの視線って、あの真っ赤な瞳もあいまって、威圧感が半端ない。 「カズ、答えろ」 「・・・あ、」 黒さんの声に、一実がたじろいだように小さな声を漏らした。 く、黒さんずるい! 僕は絶対答えないだろうからって、一実を押すことにしたな! 「く、くろさ、」 「お前は黙ってろ」 うぐ。 黒さんの一実いじめを止めるために思わず声を上げれば、すぐさまに返ってくる低い叱責。 僕も、それには口を閉じるしかない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |