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3-3

「島は今日、なにか用はあるのか?」
「んーん、別に何もー。みんないないしなぁ・・・」

パンに蜂蜜を塗りながら、首を振る。

僕の正面には夏兄が、右斜め前には春兄が座って、コーヒーを飲んでいる。
二人とももう食べ終わっていて、二人の食器はすでに空っぽだ。
僕の目の前には、こんがり焼けたトーストに、カリカリに焼いたベーコン。それと半熟の目玉焼きが鎮座している。
僕が半熟の目玉焼きが好きなことを知っていて、春兄は絶対僕の分は半熟にしてくれるんだよね。
僕はパンを口に入れつつ、新聞片手にコーヒーを飲む夏兄に視線を向ける。

「夏兄と春兄はなんかあんの?」
「あー、なんもねぇ・・・ような、気が」
「何バカなこと言ってるんだ。お前は風紀の仕事が残ってるだろう」

誤魔化すように目が泳いだ夏兄に、春兄がビシリと言うと、夏兄はバツが悪いような顔をして肩をすくめた。

「俺も、まだ生徒会の仕事が残ってるしな」

春兄はソーサーにカップを戻しつつ、ため息をついた。

そう、何を隠そう春兄は「生徒会会計」、夏兄は「風紀委員長」という、鷺ノ宮では花形と思われる役職についているのだ。

その上、春兄は制服をきっちりと着こなす、穏やかでしっかりとした雰囲気のある好青年。夏兄は制服を着崩し目つきが鋭くて怖そうなイメージはあるが、その実面倒見のいい兄貴肌で。

二人とも、そりゃーモテるらしい。
兄ちゃんの正体に気付いた一実に、聞きました。

まぁモテるだろうなぁ、とは思ってたけど。
てか昔から、すごかったしなぁ。
でも、僕が思ってた以上のモテっぷりらしい。

流石に、そんな兄ちゃんたちの関係者だと知られると、アザレや東山以上の危険があるんじゃないかと判断して、まずは様子見として離れていたわけで。
今回は学園内に人が少ないことをいいことに、隠れて会ってる・・・なーんて、逢い引きみたいだけど。

今まで普通に会っていた兄ちゃんなだけに、正直こんな自由に会えないなんて、ちょっとばかりストレスがたまる。
僕の兄ちゃんなのに!と、思わないでもない。
い、いじけてなんかないぜ。ないぜ!
こんなこと兄ちゃんたちに言ったら、絶対からかわれるに決まってんだ。
と、いう話を一実にしたところ、「からかうっていうか・・・なんか危険な予感がする」と、深刻な顔をして言われた。
からかわれるのだって、ぼくにとっちゃ危険なことにはいるよ!バカ一実!でも好き!

先日の事件の際に、携帯で兄ちゃんとしゃべった一実は、色々兄ちゃんと話をしたらしく。
やたらと、僕に兄ちゃんの話を聞きたがる。
まさか一実、兄ちゃんに惚れたか?
応援してやらんでもないが、どっちの兄ちゃんか教えてもらいたいよな。
まぁ二人とも、似てないようで似てるから、アプローチの仕方とかは同じで大丈夫そうだけどさ。
昔っから、連れてくる恋人のタイプ一緒だもんなぁ。


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