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2−15
まぁそんな感じで、高校入学してからの僕は、ほどほど上手い具合に過ごしていたわけなのである。

そう、上手く行き過ぎて「鷺ノ宮もちょろいなー。」なーんて、うっかり油断してしまったのがいけなかった。
あぁー、僕の馬鹿ー。
迂闊が基本装備、市ヶ谷です。
そんな風に自戒の念に苛まれるのは、東山とのやり取りから一週間後のこと。
事件ってホント、忘れたころにやってくるもんなんだよねぇ。


近くでガタン、と物の動く音が聞こえて、僕は目を覚ました。
頭がズキズキと痛い。
うっすらと目を開き、周りを見回す。
と、そこで気づいた。

まいった、手も足も動かーん。

紐か何かで縛られているのか、寝転がった体制のまま身動きが取れない。
それでも動けないなりに周りを見回すと、自分が薄暗い室内にいるのがわかった。

それと、複数の人の気配。

微かにタバコの香りがした。

「気がついたか?」

僕の目の前にしゃがみ込む足が現れ、僕はその足をたどって上を見た。
ニヤニヤと僕を見下ろす、男の顔。
その顔を見て、僕は意識を失う直前のことを思い出した。


放課後、僕は図書館に向かうため一人で廊下を歩いていた。
少し近道しようと、人通りの少ない道に入った瞬間、いきなり背後から羽交い絞めにされ。
そして目の前に現れた男に、ハンカチで口を鼻をふさがれた。
それに薬でもしみこませていたのか、僕の記憶はそこで途切れている。

あーもー、一人で人気のないところ、歩かないようにしてたんだけどなぁ。
ずっと楽しみにしてた予約本が届いたっていう連絡を聞いて、気がはやってしまった。
まったくもって迂闊。恐るべし、本の魔力。

俯いた僕をみて、目の前の男が低く笑った。
男の笑いが伝染するように、部屋の中で複数の笑い声がさざめく。
僕が黙っていると、男は僕の髪をつかみ、無理やり僕の顔を上げさせた。
痛い痛い!頭皮へのダメージが!
あと首もなんか方向おかしい!痛い!

「よう、市ヶ谷島だな?」
「・・・そ、うですけど。僕に何かご用でショウカ」
「あァ?んなこと、自分でもよーくわかってんじゃねぇのか?なァ?」

身に覚えがあり過ぎてどれだか分りません。
東山かな?アザレかな?それとも、ついに一実に親衛隊ができたかな??
嗚呼、モテる男はつらいぜ。

まぁ、そんな冗談はさておき。
男の種類からして・・・、

「アザレ?・・・っ」

アザレの名前を出した瞬間、鳩尾に蹴りが入った。
目の前のやつのじゃない、他の周りの誰かのだろう。
痛い。けど、思った以上に痛くない。嬲るつもりだろうから、うれしくないけどな!
痛みに体をくの字に曲げて、咳込む。

「アザレちゃんの名前をテメーみたいな、平凡が口にすんな!死ね!」
「あのさぁ、ほんとお前マジなんなの?」
「俺達のアザレちゃんに、何近づいてんですかァー」
「誰に許可とったんだよ!あァー?」

ビンゴ!アザレ関係かーやっぱりぃー。

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あきゅろす。
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