2−16 幹部さんたちが平和的だったから、ちょっと油断してたなぁ・・・。 しかしアザレのヤツ、こんな過激派がいて、よく無事だったな。 あの隊長さんの、手腕かね。 顔を上げられたまま、周りを見回す。 多分全部で5人。 パッと見、僕の頭を掴んでる男がリーダー格っぽいな。 「・・・親衛隊の幹部には、顔通してあるんですけど。」 「それがどうしたってんだ。上が許しても、俺らは納得してねぇーっつーの」 「ホント、お前目ざわり」 「特待が、出しゃばってんじゃねーよ」 まぁ、組織って言うのはでかければでかいほど、末端の管理は難しくなるわけで。 幹部さんたちを、恨みはしないぜ。 あえて言うなら、アザレのバカバカ!自分のファンくらい、ちゃんと管理しとけよ!…でも好き!って感じかな。 って、こんなこと言ってばっかだから、一実に白い目で見られちゃうんだよなー。 あの視線は、結構傷つく…。 まぁとにもかくにも、こういうことがあるだろうと準備はしてあるし、準備が無駄になんなかったって思えばいいか。 拉致られたのは、完全に僕の手落ちだ。 たぶん、気を失ってから結構経ってる。 僕の携帯は…と辺りを見回すと、離れた場所に電源を切られた状態で、打ち捨てられているのが目にはいる。 おっけーおっけー。 あとは助けを待つだけだ、と何も言わずに視線を下ろせば、再び頭上で笑い声が響いた。 「オイオイ、脅えんのか?」 「んで、どうする。輪姦す?」 「コイツで勃つかなー俺ー」 「その前に、ボコっとこーぜー」 「それだ!顔はアレだし、腹かぁー?」 ゲ、と顔をしかめると、頭を掴まれたまま無理やり立たされた。 なんかふらつく。うぅ、変な薬使ってないだろうなぁ・・・。 そんなことを思っていると、目の前のリーダー格の男が僕の頭を放した。 次の瞬間、腹に激痛が走る。 喉の奥で、詰まったような声が出た。 目の前の男の拳が、僕の腹に埋まっている。 支えもなく支える力もなく、そのまま僕の体は重力に逆らわず地面に倒れた。 ああー痛い!普通に痛い!てか苦し!息できん! 縛られたまま痛みに身もだえていると、頭上で笑い声が弾けた。 耳の中でその笑い声が反響する。 呼吸困難に陥っているせいか酸素が足りず、意識が遠くなって聞こえる音も遠くなる。 (あ、これ僕オチる) 二発目でオチるとか男としてどうよ、と思わないでもないけど、不健康な体はだれよりもよく自分自身が知っているわけで。 うっすらとフェードアウトしていく意識の最後で、激しいガラスの割れる音が聞こえた。 次いでふわり、と鼻に触れたのは、覚えのあるフレグランスの香り。 その香りに、手回しが無事機能したことを知った。 やわらかく僕の体を抱きあげた腕に、やっと僕は安心して、ゆっくりと意識を手放した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |