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「なんつー顔してんのさ」
「・・・悪かった。」
「最後の件についてのことなら、別に気にしてないよ。だって黒さん怖いもん。」
手を振りながら笑って言っても、一実の顔は晴れない。
暗い顔をしながら、一実は再び顔を伏せた。
「でも、俺はお前を・・・友達を売った」
「・・・・・・なんかさー」
思わずマジマジと一実を見つめた。
「意外と一実、不良に染まってんね。言葉のチョイスがさー。」
なんでなんか、あっちの人たちって売るって使うよね。
軽くポロリとこぼせば、ほとんど倒れこむような勢いで一実の体が力を抜かしてへたり込んだ。
「え、ちょ、一実!?」
「・・・なんというか・・・ほんと・・・島だね・・・」
「確かに正真正銘ワタクシが市ヶ谷島ですが何か問題でも!?」
あぁ、もう、力が抜けたよ。
うつむきながら肩を震わせて小さく笑う一実に、あわてて駆け寄った僕も憮然とする。
なんだよ。僕だと何か不服かよ!
「違うよ、違う。」
相変わらずさざ波のように笑い続ける一実が、やっとのことで顔をあげて。
仁王立ちで一実の前に立っていた僕は、その表情を見てほっと、息をついた。
ふわりと浮かべられた笑み。
僕がさわやかな癒し系だと思った一実の綺麗な笑みを、やっと見ることができた。
バイクを支えに立ちあがった一実の顔は晴れ晴れとしていて、僕は思わず笑って軽くこぶしでその体を小突く。
「アンニュイ一実は、もう終わり?」
「変なあだ名つけないでくれる?」
ゆっくりと一実がバイクを押して、再び歩き始める。
今度は二人同じ歩調で、月夜を並んで歩いて。
「大体、俺があのチームに居るって知られたって、お前が軽蔑することないか。」
「僕、トップトマブダチ」
「トップとダチ・・・宇宙人か何かだね。もしくは、モンスターか何か」
「あのさぁ!黒さん、意外と普通なんだよ!みんな信じちゃくれないけどね・・・!」
「ないなぁ・・・俺、あの人が血まみれな姿しか見たことないし」
「おぅ・・・クレイジーすぎるエピソード・・・」
いつもの気持ちのいいテンポで進む会話を紡ぎながら、何気なく足元を見て。
実際に触れてはいないのに手をつないでいる二人の影を見つけて、僕は思わずゆるりと笑みを浮かべてそっと一実に体を寄せた。
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