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4-31

「俺んちって、貧乏なんだよ。」

一実と二人、肩を並べて夜空を見上げる。
遠い空を見ながら、そろそろ夏なのかなぁ、とあのうだるような暑さを思い出してなんだかぐったりしてしまう。
そんなよそ見をしながら話に耳を傾ける僕の様子を気にすることなく、一実はうっすらと笑みを浮かべながら話し始めた。

「母子家庭なんだよ」
「兄弟は?」
「聞いて驚くなよ。下に5人いる。すぐ下が双子で、その下が三つ子なんだよ。俺は長男。」

段々増えるんだよ。みんなおんなじ顔だから、島が見たらびっくりするぞ、と一実は笑う。
けれどきっとそんな家族では、きっと大変な思いをしてきたのだろうと思う。
こんなふうに笑って話ができるまでに、どれだけかかったか。
そんな思いで一実を見つめた僕に一実は一瞬目を合わせ、すぐに照れたように目をそらしながらつぶやいた。

「こんな話・・・そうそうしないよ。」

それが、まるでお前だからだ、と言われているようで。
妙にこそばい気持ちになって、僕も一実から暗い空へと視線をそらした。



「父親は事故で死んだんだけど。三つ子は父親の記憶はないだろうなぁ・・・俺にはあるんだけどさ。」

それが、これ。
と、一実は眉を緩めて暖かいまなざしで、傍らのバイクを宝物のように撫でた。

「バイクがすごい好きな人でさ。ツーリングに何時も連れて行かれたよ。楽しかった。だからかな。父親が居なくなって、色々家族も大変で・・・どうしようもなく逃げ出したくなった時、これを選んだのは。」

無免許でバイク乗りまわして。いつの間にか上手くなって。
でも、家族には心配かけたくないから、離れた地域を選んで結構無茶やってた。
昼は優等生をやって、夜はバイクに乗って。
まぁ、二重生活だよな。
そんなとき、黒のメンバーに声をかけられたんだよ。

「なんか、逃げられなかったって感じだよ・・・俺はこの地域のカラーチームの構造なんて知らなかったし、だから、黒のこともあんまりちゃんとわかってなかった・・・。でも、正直あそこは・・・居心地がよくって。」

なんでか、知らないけど。
ため息をつきながらそう呟いた一実に、僕はうなずいた。



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