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4-23

「なに。すごいんでしょ?」
「・・・すごい、けど・・・。キツネがすごいって言うの、やだぁー」

子供がぐずるような顔をして、僕の膝に顔を伏せてしまった銀に、なんだか釈然としない気分で僕は頭をかいた。
そんなこと言われても。僕にどうしろと。

顔を上げない銀に面倒臭くなった僕が、何となく部屋を見回すと、入口のドアがガチャリと開いて、一人の男が入ってきた。
全身黒ずくめに、フルフェイスのヘルメット。
その格好は外で見れば間違いなく不審者。
だけども僕の記憶が正しければ、まさに今話していた、バイク乗るのが一番上手な彼じゃないか!
思わずこちらに向かってくるその姿をじっと見つめたが、その姿になんだかどっかで見た様な、既視感を覚えた。
別のソファに座る幹部に、何かを報告しているその後ろ姿をまじまじと見つめ、その後ろ姿が誰かの影にダブりそうになったその瞬間。
ちくり、と膝に痛みが走り「ひえ、」と声をあげてそっちを見れば、むっつりと顔をしかめて僕の膝にかじりついている銀の姿が。

「銀〜、なにすんだよっ」
「やだ!」
「なにが!」
「やだ!やだ!」

んもー!なんなのよ!
噛むのをやめ、今度はぐりぐりと頭を僕の足に擦りつけてくる銀に、ため息をつく。
あと少しで誰に似てるのか思い出せそうだったのに、また一からやり直しだ。
再び視線をバイクの彼に移すと、ちょうどそのヘルメットを脱いだところで。
その姿を見た瞬間、すぐにある人物の姿が脳裏に閃いた。

勢いよくヘルメットから抜いた、その頭を振る仕草、雰囲気、そしてその姿かたち。


いや、まさか、なぁ。


頭に浮かんだ人物が余りにもこの場にそぐわなすぎて、頭から振り払おうとするも、何故かくっついたまま離れず。
穴があくんじゃないかというほどの熱視線で彼を見つつ、頭の中をいやいや、まさか、あり得ない、でいっぱいにしていた僕だった、が。

ふと、彼が振り向いてこちらを見た瞬間、僕はぽっかーんと口をあけて、その顔を指さしてしまった。

そしてそんな僕を見た彼も、大きく目を見開いて、僕とまるで対称になるように、レザーのグローブをしたままの指で僕を指さして。


指の先が混じり合った瞬間、同時に叫ぶ。


「か、一実!?」

「し、島!?」


目の前にいた人物は、まさに既視感を覚えた、日吉一実、その人でした。


な、なんで、こんなとこにお前がいるんだよー!!
こんな、アングラな世界、一番ほど遠いんじゃないのかお前ー!




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