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目の前のこの人の名前は、神宮寺玲爾さん。
見た目を裏切る、まっこと雅な名前を持つ彼は、僕の二個上の高校三年生。
ちなみに鷺ノ宮生ではなく、また別の学校に通っている。


僕の地元であるこの街では、不良たちが作るチームはそれぞれ”色”の名前を冠し、それぞれ個性のある自治を行っている。
チームといっても、ちょっと不良っぽいことをやってみたいそんなお年頃から、犯罪ギリギリアウトなことまでやっている人間まで、ピンからキリまでいるんだけれど。
甘いところじゃ、普通のサークルみたいな感じ。
ただみんなで遊びたい、そんな雰囲気のところもあり。
ただみんなで喧嘩したい、そんな血気盛んなところもあり。
その中でもこの玲爾さんがトップを務める「白」は、特に特殊な位置にある。
なぜかというと、「白」は別名(というか正式名称は)「警邏隊」といい、非行少年たちを取り締まる立場にあるのだ。
といっても玲爾さんの正義感からくる、自主的かつ行動的なグループであり、大人たちに強制されてやっているわけでないそれは、しかしその役割と成果から、地元警察なんかからは絶大な信頼を得ている。
しかしながら無駄に力のあるそのチームは、ちょっとばかりイノシシ的な、猪突猛進型の人間が多く・・・。

(正義感は、時に人を盲目的にするよね・・・)

「白」のメンバーの顔を脳裏に思い受けべて、乾いた笑みを浮かべた。
良くも悪くも機能するのが、人の気持ちってもんで。
非行の殲滅に熱意を傾ける方々の思いは、時に暴走してしまうがために、地元の人間にはチームの一つとして恐れられているのが悲しくも現状である。
あちこちのチームにちょこちょこ顔を出しつつ、遊びつつ、眺めつつやっていた僕は、やっぱり「白」のトップである玲爾さんとも顔見知りで。
なんでか抱えてしまった、ちょっとごたついている問題を解決するために、玲爾さんの力を借りたかったのだが。


「まぁまぁまぁ、れーちゃん、ちょっとおちついてってぇ〜」


僕の体を後ろから抱きかかえるように、両腕が肩を包み込む。
柔らかいイントネーションの声に顔をあげると、シャープな顎が見え、そしてその上には高い鼻。
パーマを軽く当てたオレンジブラウンのふわふわな猫っ毛が、頭上に当たって少しくすぐったい。
そのくすぐったさに肩を震わせると、頭上のその人はなに?と言った様子で、こちらに目線を下げ、少したれ気味な眼を笑みに細めた。

「六日町、お前が一緒なんて珍しいな。」
「今日は双子ちゃんがいないんでねー。この子ひとりっきりじゃ歩かせらんないでしょ。」

玲爾さんにいぶかしげに見つめられても、ものともせず。
肩をすくめて答えるこの長身のお兄さんは、六日町早苗さん。
僕がちょっとばかし仲良くさせてもらってるチームの一つ、「青」の幹部の一人だ。
そこのトップの片腕とも言われているので、実質チームのナンバー2になるのかね。
ぐるぐると猫のように器用にのどを鳴らしながら僕の頭に懐く早苗さんは、なんだか兄ちゃん達と同い年には見えない。
けれど、誰よりもしっかりした大人だというのは、少しでも一緒に入ればわかる。
誰よりも周囲を見渡し、綿密に予想をたて、そして誰もが気づかないうちに行動する。

一緒にいて、安心できる人間の中の一人だ。



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あきゅろす。
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