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4-1

日が沈んで数時間後。
空には満月が浮かび、町には不穏な空気が漂い始めるその時間。
夏が近付いてきたせいか、心なしか体を包む空気は生暖かく、肌をぬるく舐める。
休日前の今日は、どこか人々も浮かれた様子で行きかっていて、町はふだんより騒々しく。

そんな本日、僕は鷺ノ宮学園から少し離れた地元のこの町まで、ちょっとした所用のため、一人でひょこひょことやってきた。

三ヶ月位ぶり?
僕は帰って来たぞーい!



さざめく人のささやき声をバックミュージックに、僕は両手を合わせて頭を下げた。

「ってことでひとつ、頼みたいんですけどぉ〜」

えへへ、とごまかすように笑って見せても、目の前の白皙の美貌はうんともすんとも動かず。
顔は笑って見せていても、内心困ったなぁ、と僕はため息をついた。


目の前にいる青年は、ヘーゼルの瞳に柔らかな栗色の髪。
くっきりとした二重の瞳を、これまた長いまつげが縁取っている。
肌はビスクドールのように真っ白で、唇は少し薄いがそこが又、男の色気を醸し出しているのだ。
全体的に色素の薄い感じの彼は、以前聞いたことによるとクオーターなのだという。
先祖帰りでもしたのか、というほど日本人離れした容姿であり。
そして何よりも、現代によみがえった中世の王子様のような美貌が目を引く青年である。

しかしこんな優男のような容姿をしていても、ひどく頑固な性格であることを僕は知っていて。
このむっつりと黙ったままの彼をこれからどう説き伏せるか考えると、全くもって気が重い。

その薄い唇を開いて、青年が口を開く。

「それで私に何の得がある。」

低い声が鼓膜を打ち、思わず聞き惚れそうになるがそんな場合じゃないわけで。
ふん、と鼻で笑って見せた相手に、僕は肩をすくめて首をかしげて見せた。

「得はないですけど、」

そこまで言ったところで、相手が「やっぱりな」とでも言うように顔を笑みに歪めて見せたのを見つつ、言葉を続ける。

「得はないですけど・・・、玲爾さん、いいんですか?」

僕の言葉に、目の前の白皙の美貌に浮かんでいた勝者としての笑みが、ゆっくりと歪む。

「チャンス、かも?」

笑ってそう続けると、射殺すようなまなざしで睨みつけられた。

コエエエエエエエエ!!!
マジ、コエーんですけどこの人!
いつもは冷静なくせに、切れるとマジ怖いんですけどおおお!



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あきゅろす。
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