山崎 悔しいけど好きみたい 3 部屋でケータイゲームをして遊んでいると山崎から連絡があった。 「なんでィ、山崎か」 ほっとこうと思ったがかなりしつこくなるので仕方なく出た。 「なんだよ、山崎コノヤロー。生意気に電話なんかしてきやがって」 しかし電話口から聞こえたのは別の奴の声だった。 『あ、いきなりのお電話すいません。つんぽと申します。山崎殿……山崎さんが倒れていたのでお引き取りを願いたいのですが』 喋っている最中にコツコツと音がする、歩いているのだろう。 「山崎が? ふーん、まぁいいや。今何処でィ、迎えに行ってやらァ」 『あ、もうすぐでそちらにつきますので』 「そうかィ? じゃあ今でらァ」 『えぇ、わかりました』 電話を切る間際にドサッと何かを落とした音が聞こえた気がした。 沖田が外に出ると屯所の前に山崎がいた。つんぽという男は山崎を置いて帰ったらしい。 「挨拶ぐれぇしてけってんでェ」 おかげで俺のイライラはMAXだ。くうくうと寝ている山崎に軽い殺意が沸き、とりあえず頭を叩いた。 もう一発、もう一発、もういっぱ…… 「……痛いってば」 「おい、俺相手にタメ口かコノヤロー」 「えっ、沖田隊長!? えっ、屯所!? なんで!? 辺り暗っ、もう夜!?」 「なんでじゃねぇよ、つんぽとか言うやつに連絡貰ったんでィ。それにもう20時でィ」 ──自分は河上と居たはずなのだが、どうして? つんぽって誰? つんぽって、確か寺門通のプロデューサーじゃなかったけ? 「そうですか……お手数お掛けしました」 「つか酒くせぇ、えれぇ量呑んだろ」 「多分、記憶がうろ覚えなんでそれなり呑んだんだと思います」 「ふーん」 俺の返事を待たず沖田隊長は歩き出した。すかさず後をおった。 沖田隊長と別れ、自室に戻った。 河上とどのような会話をしたのか、うろ覚えの記憶を引き摺りだそうと頭を抱え悩んでいた。 すると目の前が暗くなる直前、所謂落ちてしまう直前の河上の言葉がよみがえって来た。 『拙者は、山崎殿が言いたくなるまで待つつもりでござる。それほど、決断するのに勇気がいると思っておる故……明日には仕事で江戸を立つ。それまではできればこうしていたいものでござる』 ……なんか、恥ずかし!! めっちゃ恥ずかしい!! いや、河上は記憶が無いと思ってるはずだ、バレなければ大丈夫。 「なんか俺って、結構愛されてる? ……愛されてるってなんだよ、自分、キモッ」 そもそも俺はアイツのこと嫌いだ。……いや嫌いじゃないけど、別に好きじゃないし。 ふと携帯が目に入りなんとなく、本当になんとなく電話帳を開いてみた。 そこには電話番号だけが登録されたつんぽがいた。 「河上といたはずなのに、なんでつんぽが俺を送ってくれたんだろ? あ、河上と友達とか……いや、無いな。じゃあ通りかかって真撰組の隊服来てるから送ってくれたとか? でも、居酒屋で呑んでたのに……ま、いいか」 普通ならお礼を言わなければいけないんだろうけど、つんぽだって俺を屯所前に置き去りにしていたらしいし。正直、疲労困憊してるから電話は明日にして、風呂に入って寝よう。幸いもう今日は任務も用事もない。 着替えやタオルを持って、山崎は風呂場に走ったのであった。 「はー、気持ちいい。やっぱり風呂には浸からなきゃ疲れがとれないよね」 体や頭を洗い終わり、湯船に浸かり一人言をつぶやいて目を閉じる。 あ、電話番号がわかってるならショートメールおくれるじゃん。それでいいや、別に話さなくても。メールで。 それにしても月が綺麗だ。満月ではないけれど、充分丸に見える。たぶん普通の人が見たら丸に見えるかな、俺は目がいいから、すこし損かも。 そんなことを考えつつ風呂を出た。 備えつきの扇風機を回しながらショートメールの内容を考えていたのであった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |