人生にはついていい嘘とついちゃいけない嘘がある 銀時×土方←沖田
「旦那……実は土方さんが、先の事故でなくなりやした……」
世界の音が止まった気がした。
冗談でしょ。なんて言える雰囲気ではない。
「事故って……なに」
「……ターミナルの地下通路の爆撃でさ」
「そう……」
本当に、本当らしい。沖田くんの表情は凍ったままだ。
「葬式は、いつ」
「明々後日でさ。旦那も、来てくだせぇ」
行かないわけないじゃん。恋人の、葬式を行かないわけない。
「…………」
しんみりとした空気が流れ続けた。
微かに物音がして、意識を向けたときガラリと、戸が開いた。
同時に、聞き覚えのある声がした。
「じゃまするぜ、万事屋。って、なんで総悟がいんだよ」
そこには、居ないはずの土方。俺の恋人。
「……無事じゃん」
「はぁ?」
だだっ、と音がして見ると沖田くんが逃走していた。
「ちょ、沖田くん待って! あ、土方はここにいて!」
久しぶりにダッシュをして沖田くんの後を追いかけた。
「沖田くーん!」
何度か声をかければ、沖田くんは止まった。
「……すいやせん、旦那。嘘でさ、エイプリルフールでさ」
はは、と笑う沖田くんの肩に手をおいて、同じように笑った。
「面白い嘘だったですかィ?」
それを聞いた瞬間、肩に爪を食い込ませた。
「って……」
痛いと顔を歪めたが、気にしてる余裕はねぇ。
「あのな、沖田くんよォ……ついていい嘘とついちゃいけない嘘があんだろ。次、あんなこと言ってみろ……殺すぞ」
「……ヘィ、わかりやした」
驚いたような顔をした沖田くんに満足して、俺は踵を返して万事屋に戻っていった。
「でも、嘘でよかった……本当に……」
俺のそばから土方が消えるなんて、考えたくない。
「生きてけねぇよ……土方がいなきゃ」
旦那の、あんな面始めてみた。
あれから旦那と別れた後、ゲーセンに行って、甘味屋にいって……あと、どこいったっけかな。
じゃりじゃりと、屯所までの道を歩く。
夕日がまぶしい。時間もけっこうたってしまった。任務、結局サボっちまった。
曲がり角をまがって、屯所についたとき、その男はいた。
「総悟」
「……待ってたんですかィ」
「あぁ」
「……ありがとうございやす」
「……てめぇが礼言うなんざぁ珍しいな」
「え? 安産?」
「言ってねぇよ、ンなこたぁ」
目の前にいるこの男がそれほど大事なんだろう。
「羨ましいでさァ」
「んぁ? なにが?」
「なんでも、ありやせんぜ」
「……?」
いつか、俺にもできるかな。そんな奴が。
「あ、サドとマヨラーネ」
「チャイナじゃねーか」
「うるさいヨ、サドが」
できるかな。愛しい人が俺にも。
ーENDー
2014年 エイプリルフール企画
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