[携帯モード] [URL送信]

Main
O2
赤、青、黄色
いろんな色がある中で
僕らは呼吸をしている

悲しい時は声を上げながら
嬉しい時は胸にほんの少し力を入れて

ある人が言っていた
僕たちは酸素によって生かされている、と

立つのも座るのも走るのも
食べて笑って寝転ぶのも

人は酸素によって歩くんだって


友達に会った

大理石の床を颯爽と歩く彼女はとてもきれいで
道路を挟む常緑樹から
吹き込むように覗かせる風に
舞い上がる髪が
ふわふわ、ふわふわ

とても、美しかった

昔し見た彼女は
いつも汗で髪を貼りつかせて
濡れたような髪色も
こんな風に軽く浮き上がらなかった

久しぶり、と笑う彼女に
僕は同じ音しか返せなかった


僕らは酸素に生かされている

赤も青も黄色でさえ
僕らは酸素を通して色を知る

ならば、

人の数だけ呼吸があるなら
人の数だけ酸素があるなら

今僕と彼女の吸うものは
同じではないんじゃないか?

共有していた空気は
写真の中のそれとは違っていて
いや、もしかしたら
あの時だって違ってたのかもしれない


別れ際の彼女のまたねに
やっぱり同じ音を返す僕

この息が

いつかの誰かに届く頃

僕は酸素に

どんな色を通しているのだろう



あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!