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road
無くした鍵を探す旅にでた

首に掛けた鎖
繋がってるのは鍵穴だけで

開けた英雄に憧れて
嵐の中へ飛び出したんだ


冷たい風も ぬかるむ土も
全てが僕の邪魔をしているみたいで

昔 読んだ絵本の旅人みたいに
必死で鎖を握り締めた


それでも信じて歩いたんだ
鍵は「見つかる」と思ってたから


ある日、一休みに一軒家を訪ねた

とてもボロくて
ちょっと傾いた、小さな家

正直 居心地は悪そうだ

小屋とも呼べるその家で
出迎えてくれた
ふさわしい小さな主人


夜風さえ凌げるならば、と
ため息混じりに一晩を過ごした


主人は僕に食事を出してくれた
案の定、かなり粗末なもの

無いよりはマシだと
僕は固いパンを水っぽいスープで流し込んだ


僕が食べ終わるまで
主人は祈っていた

食事前の祈りとしては随分長い


主人がゆっくりと
スプーンを置くのを見計らい

僕は問うてみた

「何故そんなにも祈るのですか?」

主人は微笑んだ


勢いにまかせて質問を重ねた

何故、ここに住んでるのか
何故、こんな暮らしをしているのか


主人は黙って微笑んだままだ


翌日、僕は家を出た

主人は手土産だ、と僕の手を握る


包まれた三枚の金貨


驚く僕に主人は言う

「鍵は見つけるものなのです」


僕が口を開く前に、主人は家の中へ引っ込んでしまった


何年か経って
僕はあの家を訪ねてみた

あるのは真新しい家で
住民は何も知らないという


僕は今も鍵を探している





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