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尾行!? 護衛!?

***





空気に冷たい鋭さが混じり、雲が散り散りになったように空に広がる夕方、その日も馴染みの友人たちと下校するつもりで正門を抜けた夕凪はぶるりと身震いをして立ち止まった。


「どうした?」

メンバーのひとり、ロミオが同じく立ち止まって夕凪を振り返る。つられて雷波と林也も振り返った。

「なんか寒気がした」

夕凪は両腕を抱くように擦って、友人たちに歩みを寄せる。

「マジか、風邪かもよ夕凪」
「大丈夫かよ、俺のジャージ着る?」
「俺の人肌でよければ貸してやろうか?」
「ありがとう、大丈夫……原因がわかったから」

心配をしてくれるロミオと林也、そして冷やかしを交えた雷波に掌を向け、夕凪は再び立ち止まった。そして体ごと勢いよく振り返ると、顎を上げてスッと目を細めた。

「……ちょっと待っててくれる?」
「何を?」

ロミオの問いには答えず、夕凪はズンズンと来た道を引き返していった。

「どうかしたか?」
「何か落とした?」

事情の飲み込めない雷波たちも声をかけたが、その返事は返ってこない。


「……なんだ?」

無言で足早に引き返していく夕凪の後ろ姿を見つめ、残された雷波たち3人はポカンと立ち尽くしてしまった。

そんな彼らを尻目に、夕凪はムッと眉を寄せたまま、ある一台の車の横で立ち止まった。
正門の前には生徒の送り迎えのために数台の車が停車していたが、その中に見つけた見覚えのある車。夕凪が感じた違和感はそれだったのだ。
目的の車の前まで来て、運転席の窓をバシンと叩く。
すると、ゆっくりと下りる車窓から嬉しそうに微笑む人物が顔を出した。

「やあ」
「挨拶をしに来たわけじゃない」
「わかってる、僕に会いに来てくれたんだよね」
「全然違う」

ゆったりと話すその男の態度に、夕凪は険しい顔で語気を荒げた。

「何なんだよ、あんた。行きも帰りも人の後コソコソつけまわして!」
「だってレディが僕の送り迎えを断るからでしょう?」
「だから必要ないんだってば! 断ったんだから付いてくるな!」

再三断ったにもかかわらず、この男は毎日のようにこうして夕凪の登下校をピッタリと車で尾行し続けているのだ。
その所為で最近は朝からずっと気分が悪い。

「そんなことわからないじゃない。またこの前みたいに誘拐されたら……」

運転席の男の顔が不安げに歪む。

夕凪と春人が巻き込まれた先日の事件以来、ずっとこんな会話の繰り返しなのだ。
心配を通り越した異常なまでの過保護に、夕凪も参っている。


「しつこいんだよリオン! ……だいたいなぁ…、」
「……シッ…」

抗議をしようとした夕凪の唇にふわりと優しいストップがかけられた。リオンの人差し指だ。
そして固まる夕凪に、リオンはウインクで目配せをしながら声を落として囁いた。

「乗って、レディ……。僕はあまり目立つわけにはいかないんだ」

世間を賑わす大怪盗であるリオンは、公然の場に身を曝すことができない。
車の中で話をしようと言って、リオンは助手席のロックを解除した。


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あきゅろす。
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