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夕凪の視線を掴んで放さなかったのは、今までに見たことがないほど幻想的な色をしたリオンの瞳の色だった。
光を吸い込む海のように深く、翳せばキラキラと光を反射するビー玉のように神秘的で美しい色の瞳。
「あんたのその目……綺麗だな」
夕凪はその瞳に魅せられたように瞬きを忘れた。
「カラコンとかじゃないんだ?」
身を乗りだして覗き込んでも足りないのか、夕凪はもっと見せろとせがむようにクイクイと手招く。
「あんたってハーフなの? そういや、リオンて名前は本名?」
夕凪の質問タイムが再び始まった。
リオンに負けじと蜂蜜色の瞳を輝かせて、無防備な笑顔を近付けてくる。
リオンじゃなくともそうしただろう。
「ヒミツ…」
そう象った唇を、そのまま夕凪の柔らかな唇にチュッと重ねた。
「……っ、」
突然の事にフリーズしてしまった夕凪の無防備な唇を、今度は啄むようなキスで優しく犯す。
上唇と下唇を交互に食むたびに、チュッ…チュクッ…と夕凪の耳にわざと聞こえるように音を立てながら。
ぴくりとも動くことができず、ただ蜂蜜色の瞳を零れそうに揺らして固まる夕凪の額にリオンがコツンと額を合わせると、魔法が解けたように所在なかった焦点が意地悪く微笑むリオンを捕らえた。
「なっ……ッ…」
途端、顔中に熱が集まり、夕凪の体から力が抜ける。
「レディがあんまり可愛いから……クスッ、したくなっちゃった」
なっちゃった…、って!
クスッと笑ってリオンがあまりにも茶目っ気たっぷりに答えるのでうっかり納得しそうになったが、そんな横暴があってたまるか!!
「信じらんねぇ……」
ストン…と椅子に脱力した夕凪から力の無い声が零れた。
「犯罪的に可愛すぎるレディがいけないんだよ?」
「ば…っ、バッカじゃねーの!」
言い合いじゃ勝てない。
悔しかったが、これ以上赤面もののセリフを吐かれて追い込まれるより早くこの状況を脱してしまいたかった。
「冷めるから早く食べて」
少しも動揺を見せるまいと、夕凪は膨れっ面のままオムライスを一口頬張った。
そんな仕草さえどこかリオンには愛しく感じた。
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