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奇妙な晩餐


***



鷹森家では、仕事で忙しくほとんど家にいない両親のために家事の大半は夕凪が自分でするようになっていた。
無論、料理も例外ではない。

「はい、お待たせ」

手際よく料理を終えた夕凪がコトン…とリオンの前にスープを置いた。
空っぽの胃袋をスープのいい匂いがくすぐる。

「すごい……、これ全部レディが?」

テーブルの上に並べられた料理を見てリオンが感嘆の声を洩らす。
メインのオムライスは見た目にも柔らかさがわかる程ふわふわの玉子で包まれ、小さなガラスの器に盛り付けられたサラダがそれに彩りを添えている。そして先ほど夕凪が運んできたスープが白い湯気を立ち上らせる。

「あんた、見てたじゃん」

何言ってんだよ…と夕凪が笑う。
全くもってその通りだ。
リオンは夕凪が調理している最中もずっとその一挙手一投足を食い入るように見つめていたのだ。
夕凪にしてみればやり辛いことこの上なかったが、誰かのために作る料理は悪い気がしなかった。

「そうだよね…」

キッチンに立つ夕凪の姿を思い出したのだろう、リオンが口元を綻ばせた。
その笑顔がくすぐったくて、夕凪はわざとらしい咳払いで誤魔化した。言ってしまえば照れ隠しだ。

「あ! そうだ…」

ふと何か思い出したように、夕凪が踵を返す。
行き先はキッチンか。
そして、しばらくして戻ってきた夕凪が手に持っていたのはケチャップ。
夕凪はリオンの隣まで来ると、横からオムライスにケチャップで絵を描き始めた。
黄色いふわふわのオムライスからはみ出るくらい皿いっぱいに円を描き、その中にチョンチョンと点と下向きの弧を描く。
そしてできあがったのは大きなニコちゃんマーク。

「へへ…ガキみてェとか思ってんだろ?」

蜂蜜色の瞳でチラッとリオンを窺い、夕凪は子供のように無邪気な笑顔を見せた。

「いや…、」

リオンは首を振る。
むしろ可愛いとさえ思った。

「これは美味しくなるおまじない。俺の母さんがよくやってくれたんだ」

自分のオムライスにも同じ絵を描き終え、夕凪はパチンとケチャップのフタをしめた。

「さあ、食べよ」

リオンの向かいの席に座り、夕凪はスプーンを差し出して笑った。


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あきゅろす。
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