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楽しいデート!?


「夕凪、次はあれ!」

呼び方もすっかり"あんた"から"夕凪"だ。
楽しそうにアトラクションを満喫する春人の後方で、夕凪は大きく息を吐き出す。

「木葉くん、俺もう疲れたー…」

ヘトヘトになって夕凪が言うと、春人は少し呆れた顔で振り返った。

「夕凪ってホント体力ないのな、これくらいで」

ハードスケジュールの中ホールコンサートも熟す春人にとってみれば、これくらいの運動はなんてことはないのだろうが、夕凪にしてみればフルマラソン並だ。

「ちょっと休憩…」

多く語ることもできずに、夕凪はガックリと項垂れながら春人に頭を下げた。

「…っ、しょうがないなぁ! ちょっとだけだからな」
「んー…、ありがと」

夕凪が顔を上げてヘラッと笑うと、春人は面白くなさそうに頬を膨らませて不満タラタラの様子だった。

「5分だけだからな」
「え…、鬼。」


そうして散々遊んだ合間の一休み。
ベンチで休憩しようと言い出した夕凪に春人がちょっとしたゲームを持ち掛けた。

その結果、ジャンケンで負けた方が勝った方に奢るという賭けが成立したわけだが……



「アイドルの俺にコーヒー買いに行かせるとか、ホントありえないんだけど」

右手に紙コップ、左手にソフトクリームを持ちながら戻ってきたのは春人だ。
春人は愚痴を零しながら、ベンチに座る夕凪に紙コップを差し出した。


「あはは、自分がじゃんけんで負けたくせに」

夕凪はそれを楽しそうに笑いながら受け取った。

「木葉くんはソフトクリームなの?」
「うんー。食う?」
「いや、俺甘いのはちょっと……」

夕凪が手の平を見せて苦笑すると、春人は不思議そうに首を傾げた。

「甘そうな顔してんのにな」
「ん?」
「あー…忘れて? 口が滑っただけだから」
「……うん」

春人が何を言ったのかはよく理解できなかったが、本人にとって余程の失言だったのだろう。耳が真っ赤だ。
クスクス笑う夕凪に居心地の悪さを感じながら、春人はふいっと顔を逸らした。

「っつーか、俺にこんなんさせんのあんただけなんだからな、光栄に思えよ!」
「うん、ありがとう」

嫌みを言ったつもりが素直に感謝されてしまうと、益々バツが悪くなる。
そのまま夕凪の隣に座るのは癪だったが、他に選択の余地はなかったので、春人はふんっとできるだけ虚勢を張って腰を下ろした。


「はい。じゃあこれはお礼」

そう言って不意に夕凪が春人の顔の前にぷらんと何かを揺らした。

「……お守り?」
「そう。学業成就!」

紺地に金の糸で学業成就と刺繍されたシンプルなお守りだ。

「明日から勉強頑張って!」
「……お守りとか超余計なお世話。つか、いらないし、こんなダッセーの」
「仕方ないじゃん、さっきそこで見つけたんだから」

そこ、と指されて春人もその先を視線で追う。

「みやげ屋かよ!」

御利益が疑わしい。


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あきゅろす。
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