2 「あ、そうだリオン。今週の日曜日とか空いてる? かむいと遊園地に行く予定なんだけど……あんたもどうかな?」 「え…?」 リオンの心臓を叩くように告げられたのは、夕凪からの思ってもみないお誘い。 「ダメ…かなぁ……?」 頬にかかる柔らかい髪の毛を耳に掛ける仕草と俯き加減のはにかんだ笑顔に、リオンの心は更に舞い上がる。 思春期を思わせる甘くて淡い告白。 ダメじゃない!夢のようなお誘いだ!ダメな訳がない!例え地球が滅亡しようとご一緒したい!! だが……… リオンはチラリとかむいを見た。 「俺は構へんよ…黒いのンが一緒でも……」 相変わらず目は合わせてくれないが……といってもゴーグル越しなのでリオンの視線を確認しようがないのだが……、かむいがポツリと言い放った。 「いいの…?」 胸がじんわりと温まる。 早鐘のように鳴っていた心臓が次第にゆっくりと、だけど大きく鼓動しているのを確かめるようにドクンドクンと脈打った。 「しつこいなァ。ゆう君が誘っとンねん! お前、断ったら許さんからな!」 「違っ…かむい、別に俺、そんな強制してるつもりは……。ごめんリオン、いいんだ。あんたはあんたの都合を優先…」 「ありがとう」 リオンは形の良い口元で上品に微笑むと、 「そのお誘い…是非お受けしてもいいかな?」 片手を胸元に当てた恰好で少しだけ上体を屈めた。海外の映画なんかで見たことがある、臣下が君主の命を受けた時のような…… 「そんな…大袈裟な……」 顔を真っ赤にして慌てる夕凪の隣で、 「阿保らし…」 かむいが呆れ顔で嗤う。 それでもリオンの浮かれる気持ちは抑えきれない。 初めて夕凪が誘ってくれたのだ! 初めてのデート! 2人きりではないことを差し引きしたってお釣りがくるほど気持ちが高揚している。 「レディ、抱きしめてもいい?」 「やだ」 「あかん」 熱に浮かされるまま両手を広げたリオンに、夕凪とかむいの冷たい視線が突き刺さった。 「ふふ、…だよね」 だが、それでもいい。それでもめげない。 今日はこの先どんな冷たい言葉を掛けられようと笑っていられる自信があった。 【日曜日の朝10時にハイピークパークの入り口】 待ち合わせの時間と場所を決め、デート(おまけ付き)の約束をした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |