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「……ゆう君、オレンジジュース、もう一杯飲んだらあかん?」

夕凪の袖をクイクイと引っ張って、かむいの大きな瞳が覗き込む。

「んー…仕方ないなぁ。あと一杯だけだよ?」

夕凪も大概かむいには甘いらしい。
困ったように笑いながらも、結局は見逃しのイエスを許してしまうのだった。

「やったぁ! じゃあゆう君と、あとそっちの黒いのの分も持って来たるわ」

黒いの…、とは恐らくリオンのことであろう。

「かむい、そんなに持てないだろう? いいよ、俺が持って来てあげるから」

立ち上がったかむいを再び座らせると、夕凪は入り口に向かった。


「あ、リオンは烏龍茶でいい?」
「ああ…うん」

特にこの2人には違和感のない会話だったのだが……


「リオン?」

ひとり、かむいが怪訝な顔で眉を寄せた。

「あ。………え、っと…リオ山さん。だから、リオン……なんつって…」

渇いた笑いで必死のフォローをしてみる夕凪。

「スズキさんじゃなくて?」

そして再び立派な墓穴。

「リオ山…鈴樹さん」

無理だろう。

「変な名前」

全く以てその通り。
返す言葉もなく夕凪は俯いた。

「ハハハ…よく言われるんだ。だから、よかったら君もリオンって呼んでくれないかな?」

それを果敢に援護しようとするリオン。
もはやフォローも2人がかりである。

「なんや、ややこしいから“黒いの”って呼ぶわ」
「や…、それはちょっと嫌かな。だったら、スズキサンでいいよ…」
「そんなん一度に言われても覚えられへん。えぇやん、ウチのクラスの木暮くんかて眼鏡かけてるから“メガネ君”やし。贅沢言うたらあかんよ。木暮君が可哀相や」

だったら木暮君も名前で呼んであげてくれ……。

そんな複雑な思いを抱くリオンの心とは裏腹に、夕凪は満足そうに微笑んだ。

なんだ、仲良くやってんじゃん。

「じゃあ俺、ジュース取ってくるね」

柔らかい笑顔を残し、階下へと降りていってしまった。

トントントンと足音が小さくなっていくのを確認して、かむいがくるりとリオンに向き直った。



「―――…ふぅ。やっと、腹割って話せるなァ? 黒いの。」

さっきまでの無邪気な子供の表情とは一変して、かむいが冷たい視線をリオンに向けた。


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あきゅろす。
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