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 繋ぎ留めておかなければ、この手は離れてしまうのだろうか……
 答えを出さなければ、旭奈は一緒に居てくれるのだろうか……

「やだ…っ……せんせ…っ、どこにもいかないで…」
「夕凪、大丈夫だよ、夕凪。ごめんごめん、この話は一旦おしまい、な」

 ヨシヨシと言いながら旭奈が夕凪を宥める。幼い頃のままだ。だが、こうした旭奈の慰めに慣れてしまった夕凪の体は素直に心を静めていく。

「ヨシ、いい子だ夕凪。あ、そうだ……俺と鷹森さんが初めて会った公園がこの近くにあるんだけど、行ってみるか?」

 旭奈と鷹森が初めて会った場所……、夕凪は鼻をすすって顔を上げた。

「あはは、お前、鼻の頭真っ赤だな。そういうとこは昔のままだ」

 旭奈がキラキラとした笑顔で言う。

「ここが寒いからだもん」

 どうやら泣いたからだとは認めないらしい。
 旭奈はニィと笑って無防備な夕凪の鼻の頭にキスをした。夕凪は驚いて両手で覆い、大きく後退った。

「おいおいおいおい転ぶなよ」

 足元がもつれてよろけた夕凪の腕を旭奈が掴んだ。

「温まるオマジナイだよ夕凪。ホラ、寒くなくなっただろ?」

 夕凪の耳まで赤くなった顔を見れば答えは聞くまでもない。旭奈は楽しそうに声をあげて笑い、自分もパタパタと手の平で顔を煽いだ。

「あーあ、俺も熱い」

 言うように旭奈の耳も赤かった。

「さ。温まったところで行くか、夕凪」

 相変わらずの眩しい笑顔で旭奈が手を差し出した。握れということなのだろう。
 だが夕凪は両手をポケットにしまって旭奈の隣に並んだ。

「え…夕凪まさかの反抗期? けど、それじゃあ隙だらけだ、どうすんの?」

 抵抗する盾を収めてしまった夕凪をからかうように旭奈が肩を抱き寄せて顔を近付けると、夕凪はわかりやすく飛び跳ねて旭奈から距離を取った。

「あはは! 冗談だよ、夕凪。お前がちゃんと俺の気持ちに追いついてくれるまで手は出さない。約束する。だからそんな風に先生のこと警戒しないでくれ。寂しい」
「先生が変なことするから」
「そうだな、俺が変なことした、悪かった。鷹森さんにバレたら逮捕されるレベルだ……ごめん、夕凪がイヤだってわかったからもうしない」

 遠退いてしまった夕凪に旭奈が声を張り上げる。
 すると夕凪は焦ったように駆け寄ってきて旭奈にしがみついた。

「え……何これ、何のご褒美?」

 突然の甘えに旭奈の心臓がドンと大きく跳ねる。

「嫌じゃない」
「……へ?」
「嫌じゃないから、先生のこと逮捕なんてさせない」
「ああ、なんだ、そういうことか」

 旭奈は心臓を押さて長く息を吐き出した。そして夕凪の髪をくしゃくしゃと撫でる。

「驚かせてゴメン、夕凪。暗くなる前に行こう」

 そのまま肩を抱いて旭奈は第二の目的の場所を目指した。
 15分も歩けばその場所は見えてくる。見晴らしのいい、広い公園だ。外周に沿ってポツポツと遊具が点在している。



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