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「任せてください!」

 力強く返事をする旭奈に、却って不安が募ってしまうのは何故だろう。
 義実は諦めに近い溜め息を溢した。

「くれぐれも夕凪に変な遊びを教えないでくれよ」
「変な遊び!?」

 旭奈は目を剥いた。

「大人としての分別を弁えて欲しいとお願いしているんだよ。夕凪はまだ高校生だ」
「ああっ、はいっ! もちろんです!」

 顔を真っ赤にした旭奈を訝しみ、義実は大袈裟に眉を寄せた。

「豪樹くんも呼んだ方がよさそうだな」
「アッ、いえ…、二人で! 夕凪と二人で話したいことがあるんです。絶対に危険な目には遭わせませんので、お願いします」
「……」

 焦る旭奈に、義実の曇った表情は変わらない。そんな二人のやり取りを夕凪が可笑しそうに笑った。

「あははっ、先生って親父の前だとタジタジで面白い」
「え…夕凪ぃ……」
「心配事が多すぎる」
「大丈夫だよ、親父。俺も先生も危ない所へは行かないから」
「……そうか。お前がそういうなら」
「鷹森さん……俺の立場って……」

 義実に全く信用されていないのは仕方ないとして、旭奈は夕凪の前で面子が立たない状況に肩を落とした。
 そんな旭奈を尻目に義実は時計を確認する。

「おっと時間だ。もう行かないと」
「あ、待って。俺も玄関まで一緒に行く!」

 出掛ける義実の鞄とコートを持ち、夕凪が義実の隣に並んだ。

「それじゃあ旭奈くん、今日の保護者は君なんだ。くれぐれもよろしく頼むよ」
「はい!」

 しっかりと最後まで釘を刺していく義実に、旭奈は背筋を伸ばして気を付けの姿勢をとった。
 義実を追いかけるようにしてパタパタと遠ざかっていく夕凪の足音。二人を見送りながら旭奈は不思議な心地を抱いていた。

「相変わらず過保護でしょう? というより夕凪が旭奈くんに懐いてるからヤキモチ妬いてるのよね。可愛いとこあるでしょう?」
「え……、はあ…」

 可愛いだろうか。向けられた威圧感は息もできない程のパワーがある。
 返す言葉が見つからず、旭奈は曖昧に笑った。

「今日は夕凪をよろしくね、旭奈くん」

 旭奈は顔を上げた。

「あの子ね、あなたと出掛けるって約束をしてからとても楽しみにしていたのよ。本当にあなたが大好きみたい」
「……俺も、……大好きです」

 素直に零れた本心だ。だが茉結が目を丸くして固まったので、旭奈は自分の失言に気付いた。言うべき言葉じゃなかった。みるみる顔が赤くなる。だが弁解する言葉が出てこない。
 そうして互いに固まっているうちに茉結が吹き出した。

「えっ…」
「ごめんなさい笑ってしまって。あなたが赤くなるからつい」
「……すみません」
「いいえ、謝らないで。むしろ感謝しているんだから」

 感謝―――…?
 旭奈は耳を疑った。だが茉結は朗らかに微笑する。

「もしもあなたが夕凪のことで何か負い目を感じてそうしてくれているのなら、その必要はないって言いたかったの」

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あきゅろす。
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