長編
6
そんなやり取りをしていれば俺の服の裾に少しだけ重力を感じた。
…そういえばトラの事放ったらかしだったな。
「ごめんな、トラ」
「知り合い?」
俺が謝れば、ふるふると頭を横に振って聞いてくる。
だから一々仕種が可愛いんだよ、こいつは…!
なんて心の葛藤は大人の余裕で押さえ込んで返事を返す。
「こいつはスタンって言って、ただの剣オタク。」
「ひでぇ、トキ!あんなに愛し合っ…」
「うるさい。昔、ここを通りかかった時に知り合ったんだよ」
縋り付いてくるスタンの言葉を遮れば、目の前で泣き真似を始めた。
…スタンのテンションにトラが若干引いてるけどそのままでいいか。
「スタン、こいつはトラ。こいつに合う武器を見繕って欲しいんだ」
「おっと。トキの頼みを断るはずねぇだろ!ちょっと待ってろよ」
そう言ってちらりとトラを見た後、店の奥へと入って行くスタン。
仕事モードのスタンは信用出来るから、あいつに任せておけば一安心だろ。
かくいう俺もスタンに選んで貰った剣が使いやすくて、ずっと使ってる。
…普段はただの剣オタクだけど。
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