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繊細な時間

好き、大好き。

あなたの私より少しだけ高い背丈も

あなたのさらさらな黒い髪も

あなたの澄んだライムグリーンの瞳も

優しい口調も

真摯な姿勢も

凛とした雰囲気も

たまに見せるあどけなさも

あげたらきりがないほど、全部

そう、ぜんぶを受け止めたいの―











「本当に、いいんですか?」


真剣な表情でエストがベッドの淵に腰掛ける私の前で、すっと膝をついた。

きっと、この気持ちは言葉じゃ伝わらないから、こくりとうなずいた。


「僕は…身体を重ねることが大切だとは思わないし、好きだという気持ちがそこに辿りつくとも思いません。それでも、ですか?」


エストの瞳はじっと私を捕らえて決して目線をはずそうとしない。


再び、私はうなずいた。


「…わかりました」


ひざまずいていたエストが私の手をとってその甲に口唇を寄せる。その姿が本当に物語に出てくる王子様みたいでドキドキが止まらない。

エストは口唇を離すと私の膝の裏に腕をまわして私をベッドに横たえ、覆いかぶさってくる。


「ルル…」


両手で頬をはさまれて整った顔が近づく。ぎゅっと目を閉じると優しいキスがおでこに、まぶたに、はなさきに、そして口唇に降ってきた。

触れるだけの口づけの後はもっと深いところまで求められて、息が上がる。


「ふぁ…ん、はぁ…」


頬から外された手が、器用に服のボタンをはずしていき、彼の前で私は一糸まとわぬ姿を見せる。

目の前では少し頬を染めたエストがもどかしそうに黒い手袋をはずしていた。


「あなたは…」

「ん…ふぁ、ぁ…」

「あなたは純粋で、僕なんかが触れたらいけないのに…」


エストは何かを耐えるような表情で呟きながら、するすると首から胸、お腹を手のひらで撫で下ろした。


「でも…あなたに触れずにはいられないんです」


耳元で熱い吐息と共に囁かれたエストの本心に、私は返す言葉の代わりにエストのさらさらとした髪に指を絡めてキスをした。


「ルル…」


甘味を帯びたエストの声をスイッチに私たちは思考を止めた。

ただ五感を研ぎ澄まして、あなたの声に溺れて、言葉にならない吐息を求めた。














そっと目を開ければ、あどけない寝顔であなたが横にいる。

行為が終わってからの罪悪感にさいなまれながら、心の奥ではずっと彼女を抱きしめていたい、と思う自分に嘲笑が漏れた。


どれだけ貪欲なんだろう。


彼女のよく動く口唇も

彼女のそらされることのない瞳も

彼女のおせっかいも

ぱたぱたと変わる表情も

いつだって他人を救う小さなその手も

意外と大人びたところも

たまに見せるあどけなさも

あげたらきりがないほど、全部

そう、全てを愛してしまった―





    繊細な時間




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あきゅろす。
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