一歩大人に
「しばらくルルとは会わないから」
いつもと同じ朝。
いつもと変わらない様子で待ち合わせに現れた彼は、唐突にそう言った。
――――
――
―
「あらら、ルルちゃん振られんぼ?」
私が呆然としているうちにユリウスは登校したらしい。ポツンと残された私にアルバロが声をかけてきた。
「…うん。そうなるのかな…」
…そうなるんだろう。
どうしてユリウスがそんなことを言い出したかは、全くわからないけれど…彼が私に対して拒絶を示したのは初めての事だった。
「ふーん…じゃあ、しばらく俺と一緒に学校いこうよ」
本心のわからない笑顔でアルバロは私の肩を抱いて、意外にも丁寧に、ユリウスの言葉から立ち直れない私を学校までエスコートしてくれた。
それから1週間、ユリウスは私を徹底的に避けていた。朝はもちろん別々、帰りも待っていてくれないし、学校で偶然会っても…目線は合わなかった。
「うーん、ルルちゃんと出掛けるなんてひさしぶりだね?」
日曜日のカフェテリア、目の前にいるのはユリウスではなく、アルバロ。アルバロはあの日以来なぜか私に引っ付いている。
「それにしても、ホントにユリウス君はどうしちゃったんだろうねぇ…」
アルバロはなにも答えない私を気にせず、この1週間何度もした質問をまた投げかけてきた。
「ユリウス君はちょっと飽きっぽい所あるしね?」
…つまりアルバロは私がユリウスに飽きられたのだと言いたいらしい。
そんなわけない、と思いたい。
…でも、他に理由もない。だって、前日まではいつもと変わらなくて、別れ際にも「ルルと一緒にいたい、明日が早く来ればいいのに」って言っていた。
「ね、ルルちゃん」
名前を呼ばれて顔をあげると、すぐ近くにアルバロの顔があった。びっくりして、離れようとしたら顎を強く掴まれ、耳元で囁く。
「俺じゃだめ…?ずっとルルちゃんの事好きだったんだ。ユリウス君よりもずっと優しくするよ」
「…っ!!」
私が行動を起こす前に、第3者の手がアルバロの腕を掴んで私から引き離した。
「ユ、ユリウス!!」
1週間ぶりに近くで見たユリウスは見たことがないくらいに怒っていた。彼は面白そうに笑うアルバロを一瞥したあと、無言のまま私の腕をとって歩き出した。
「ユリウス!?えっ、待って!!」
戸惑う私をよそにユリウスはグイグイと早足で私を路地裏へ引っ張って行く。
「…っ、ユリウス!!」
そのままの勢いで身体を壁に押さえつけられ、やっと向き合うと、ユリウスはさっきとはうって変わって不安そうな表情をしていた。
「…ルルは俺よりアルバロがいいの?」
1週間ぶりに聞いた声は、小さな呟きで、よく見たらなんだかちょっと目も潤んでいた。
「俺、ルルに甘えすぎ…?」
「…え?」
「ラギにルルがいないと寂しくて辛いって言ったら、そういわれた…」
どうやら寮の鏡の前で別れた後、なにかがあったらしい。…それで私と会わないなんて言ったの?
「…そんなことないよ?私はユリウスが1番だもの。この1週間、ユリウスと会えなくて、すごくつらかったよ…」
言葉にしてみて私自身がいかにユリウスを求めていたか実感した。
我慢できなくて、目の前にある優しい彼の胸に抱きついた。
「…ルルっ!!」
そんな私をユリウスはぎゅっと抱き締めた後、そっと唇を重ねた。
「ん…」
小さく声をもらすと、ユリウスが私の唇を舌でなぞってきた。それにこたえて、少し口を開くと直ぐにお互いの唾液が絡み合う。
「ふぁ…ん、はぁ…」
少し苦しいけど、その苦しさでユリウスを感じる。
「…んんっ!!」
夢中になって舌を絡めていると、無防備だった足の間にユリウスが指をはわせた。
「ぅんっ!!…はぁ、ユリ、ウス…んんっ…」
エスカレートする行為に足ががくがくして立っていられなって、ユリウスの背中に掴まって顔を肩口に埋め、声を抑えた。
「…いれるよ?」
そう囁いたユリウスも余裕がないみたいで、熱いものが一息に奥まで入ってきた。
「ふぁっ!!…ん、んんっ…」
「…っ、きつ…」
ユリウスの吐息を耳元感じながら、次第に激しくなる攻め立てを私は全身で受け止めた。
―――――
―――
―
「…ね、ルル。うまく言えそうにないんだけど…俺、頑張るから」
二人で寮に帰る途中、ユリウスが繋いでいた手をぎゅっと握って言った。
なんの事かわからなくて首をかしげるとユリウスは照れたように温かく笑った。
君のためにも一歩大人に
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