お前が欲しくて
「なー、ルル」
「ごめんねっ、今手が離せないの!!」
「お、おう。悪い…」
ばたばたと家の中を走り回るルル。
せっかく俺が休みでも、最近はどこかに出かけることも、ゆっくりとすることもない。
「あー。あぅ?」
「おう、どーした」
ベビーベッドで寝ていた娘が目を覚ましたらしく声をあげた。
覗きこむとニコニコと笑って手足をばたばたさせている。
ご機嫌な様子につんつんと頬をつついてみる。
「ぷにぷにしてんなー」
「きゃぁー、あー」
そのあいだにもルルはこちらの様子をうかがいながら、走り回っている。
ルルいわく、娘から目を離せる俺の休みの日こそいつもはできない家事をしてしまいたいらしい。
だから、俺は最近放っておかれているのが現状だ。結婚当初のような雰囲気を味わいたい、とは言わないが、少しくらい俺のことも気にしてほしい。
「終わった―!!」
どうやらしばらくは眠らなそうな娘を抱き上げてあやしていると、ルルがこちらに向かってきた。
時計を見るとちょうど昼食にいい時間だ。久しぶりに外食に行こうと、誘おうと口を開く。
「なー、ル…」
「あやしてくれてありがとね、ラギ。あっ、もうお昼じゃない。ちょうどいいからちびちゃんのお買いものしつつ、ご飯にいきまちゅかー?…あ、ラギも行く?」
「…おう」
そんなこんなで、ルルと娘が中心の『いつもの』休日を俺は過ごすのだった。
――――――
――――
――
「ラギ、今日なんか変だったよ。どうかしたの?」
「…別に」
「だから、そういうのが変なの!!怒ってるの?」
夜になると子供ができて別になった俺の寝室にルルがやってきた。
こんな状況が久しぶりの二人きりの時間だ。面白いわけがない。
「怒ってなんてねーよ、早く部屋戻れ。一緒に眠る気はねーんだろ?」
「…拗ねてるの?…最近二人きりでお話してないし、今日はラギと眠ってもいいかな…?」
ルルも何かしら俺の態度から思うところを見出したらしい。恐る恐るベッドに腰をかけてきた。
その様子に大人げない態度を取った事を後悔した。ちゃんと話をすべきだったのに。
「いいに決まってるだろ。ほら、入れよ」
「うんっ、えへへ…なんだかひさしぶりだとドキドキするね」
「ばーか……あのさ、ルル。ちびと3人もいいんだけどさ、たまには二人で過ごす時間を持とうぜ?俺ももっとちびの面倒みるし…たまには母親じゃねー、ルルでいろよ」
「うん…ありがと、ラギ」
もぞもぞと隣に潜り込んできたルルに腕枕をしてやると照れたようにルルは俺に抱きついてきた。
「あんまり頑張り過ぎるなよ?おやすみ、ルル」
そんなルルの身体を抱き寄せて、俺は眠りにつくのだった。
いつまでも、お前を愛してるから
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