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抱きしめて

「手、離してもらおうかな?」


まさか自分がこんな役回りをする日が来るとは思わなかった。

無遠慮にルルの肩に手を置く男の腕を、掴んで引き離す。


「なんだよ、お前。痛い目みてぇのか?」

「まさか。でも、俺も引くわけにはいかないんだ。彼女は俺のだからね?」


ここが休日の広場でなければ、馴れ馴れしくルルに触れた時点で殺してやったのに。

びっくりとした表情で男の手が置かれていた肩を触るルルに、肩だけでなくその全てを消毒しようと心の中で決めた。


「うっせぇな!!おいこらっ、腕離せっ!!」

「俺の腕も振りほどけないのに痛い目なんてみせられないでしょ?それでもやるって言うなら、覚悟してね?」

「ちょっと、アルバロ!!」


馬鹿な男にいつもの作り笑いでにっこりと笑いかけながら、掴んだ腕に力を込める。醜く歪む男の顔に悪戯心がわきあがった。

しかし、俺の表情から何かを読み取ったらしいルルが焦って俺のマントを引っ張ってきた。


「あのっ、えっと…もういいじゃない!!時間もなくなっちゃうし、早くアルバロと二人きりになりたいの」

「ふーん…俺は別にいいんだけど」

「っ、わかったよ!!…覚えてろよ!!」


ルルの言葉はあからさまな嘘だとわかったけれど、一生懸命俺の気を引こうとする態度に仕方なく手を離すと、男は捨て台詞を吐いて逃げていった。


「はぁ……きゃっ、アルバロ!!」

「最悪…」


そんな男からはすぐに興味が失せ、俺はすぐにルルをマントの中で抱きしめた。

ちょっと目を離した隙に、ナンパされるなんて考えもしなった。

そして、それを防げもしなかったのに、ルルを他の男に取られそうになって苛立つ勝手な自分に腹が立った。


「ご…ごめんなさい。自分でなんとかできなくて」

「そうじゃないよ、最悪なのは俺。ごめんね、怖いさせちゃって」

「ううん、アルバロが助けてくれるって信じてたもの」


えへへ、と照れたように腕の中から見上げてくるルルは、ストレートにぐっときた。


「……ねぇ、ルルちゃん。二人きりになろうか?あの男の触れたところ、俺に触れさせて?」

「アルバロっ!?だ、ダメだからね!!」

「ヤダ。その気になっちゃったしね」


ちょうど隠れ家もすぐそばにある。俺は逃げられないようにもっと強くルルを抱きしめた。




 抱きしめて、抱き上げて、押し倒そう   

 
 

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