蜜色の世界
「ルル、来い」
「う…はい…」
ファランバルドに来て変わったこと。
それはまず、私の立場。
そして…ビラールのストッパーがここにはいないということ。
「あのね、ビラール?」
「なんだ?」
広い寝台に優雅に横になっているビラールに、私はそろそろと近づきそのふちに腰かけた。
この国独特の衣をラフにまとうその貫禄のある姿は、なんだか身の危険を感じてこれ以上近づくのはためらわれる。
学園に居た時と違う彼の雰囲気。
甘くとろけるような、それでいて冷たく厳しい態度で私を守ろうとしてくれる彼が本来の彼の姿なのだろう。
「その、あのね?ビラールはちょっと休みを取った方がいいと思うの」
「…すまない、寂しい思いをさせてしまっていたか?わかった、近いうちに休みを取ろう。さあ、いつまでもそんなところに居ないでこっちにおいで」
「きゃっ!!ち、違うのっ、ビラール、手を離してちょっと待って!!」
私を寝台に引きこもうと腰にまわされるたくましい腕に、私は急いで抵抗した。
私の言葉を彼はまさかの解釈してしまった。
忙しい彼の仕事の邪魔をしたくは無いし、今でも彼は私との時間を大切にしてくれていて、寂しさは感じない。
「なんだ、まだ話があるのか?我が妃は私を焦らすのがうまくなったな」
「もうっ、そうじゃないの!!その、たまには普通に眠りましょうって言いたいの…」
そう。ファランバルドに来てからというもの、寝室をひとつにしたビラールは毎晩のように私を求めてくれる。
それは確かに嬉しいけれど、彼の多忙さを考えると夜はしっかり休んで欲しかった。
「ルル、それは違う。愛しいお前を抱くことで私は癒されている」
「で、でも…」
心はそうかもしれないが、身体はそういう訳にはいかないのを私は身をもって実感していた。
ファランバルドの勉強しかしていない私がそうなのだから、ビラールは体力が違うといえ辛い日もあるはずだ。
「ルル…そんな悲しいことを言わないでくれ。美しく乱れるお前の姿を1日でも見られないのは私にとって苦痛でしかない」
「あっ、ビラール…ん、ぁ…」
ずっと私を抱いていた腕に私は今度こそビラールの下へとさらわれて、深い口づけが反論を飲み込んだ。
「ふぁ、だめ…ビラール、あぁん!!」
「お前の求めならどんな我が儘でも叶えてやりたい。しかし、私の願いも叶えてくれ…」
ビラールに組み敷かれながらも反抗する私に、彼の指がいきなり差し入れられた。
彼に慣らされた身体は欲望に忠実に、その指を受け入れてしまう。
「やぁ、ん…あっ、はん…」
「いいのだろう?何も気にすることはない。ただ、お前は私だけを見ていればいい…」
どんどん大きくなる快感に、後戻りができないことを悟り、私はビラールの背に腕をまわすのだった。
甘い蜜に乱されて…
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