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フレグランス

「レーナ・ルーメン。刻印に捕らわれし贄、光、鏡。現実を映す水鏡となり今を示せ」

ある日の放課後。

とっくに授業が終わっているのになかなか現れないルルに、なにをしているのかと水たまりに魔法をかけた。

そこに映ったのは、君と――――





「待たせちゃってごめんなさい!!ちょっと授業が長引いちゃって…」

「そんなに急がなくても大丈夫だよ。俺はいつまででも君を待ってるんだから」


しばらくして現れたルルは頬を赤く染めて大きく肩で息をしていた。

俺のために走ってきてくれたのならうれしいのだけど、そうでないことを知っていて。

頬が赤いのも走ってきたからではない、ということもわかっていた。


「…どうせ嘘でしょ?」

「そんなことないよ、君に会えないと寂しいからね。それに、嘘をついてるのはルルちゃんでしょ。ずいぶん前に先生とすれ違ったんだけど、なにしてたのかな?」

「え、えっと…その…」


相変わらず嘘が下手なルルは俺から目をそらして困っている。その様子に俺は平静を装っているが、不愉快極まりなかった。

別に隠すことなんてないだろうに。それとも、隠しておきたい理由でもあるのだろうか。

…他の男に告白された事を。



――水鏡に映ったのは、教室で男子生徒と二人きりのルル。

声は聞こえないけれど、男の口の動きが『好きです』と告げていた。

さて、何て答えるのか、命運が分かれるその前に男がルルの腕を引っ張り抱き寄せてしまう。

ルルの口許は見えなくなり、ルルはそのあとすぐに男の腕を振り払い、勢いよく教室から逃げ出してこちらに向かってきた。



…さて、あいつは俺になんて言うのだろう。

あの様子では断ったのだろうが、それをどう俺に言うのか。そう思い魔法を解いてルルを待っていると、告げられたのはつまらない嘘。

嘘を見破っても隠し通そうとするのはやましい気持ちがあるからか。


「ルルちゃん。その香りは誰のもの?」

「香り…?あっ、これは…その…」


先程の男と同じようにルルを抱くと、ふわりと男物の香水が香った。

爽やかなその香りに抑えていた独占欲がかき立てられる。

…こいつに他の男の香りなんて似合わない。

俺の香りだけをまとっていればいいんだ。


「ふーん、面白くないな…どうすれば君は口を割ってくれるの?恥ずかしいくらいにどろどろに溶かしてあげようか?それとも酷くされるのが好きなのかな…?」

「や、やだ!!知ってるんでしょ!?アルバロっ…離して!!」

「なんのこと?わからないな…」


暴れるルルをきつく抱きしめて、その細い首に顔をうずめると早い鼓動が聞こえてくる。

柔らかなその皮膚に唇を寄せ、隠せない俺の印を刻み込んだ。他の男の跡なんて、全て俺が消してやる。


「あっ…だめっ!!アルバ、んんっ…ふぁ、ぁ…」


抵抗するルルの声をキスで奪い、わざと音を立ててくちゅくちゅと口内をかき乱す。

逃げる舌に俺のを絡め、ルルが弱いその裏をくすぐるとすぐに息を乱して小さく艶やかな声をあげた。

徐々に弱くなる抵抗と潤む瞳にもうひと押し。腰を抱いていた右手を柔らかな足へと下ろし、撫で上げる。


「んゃ、はっ…ぁん、んんっ!!」


感じやすい場所を責められて、がくりとルルの身体から力が抜け、俺はルルを抱き上げた。


「…さて、どうしようか?」

「はぁ、はぁ…ん、私が好きなのは、アルバロだけだからっ…」


もう許して、とぎゅっと俺のシャツを握ったルルからは、甘い彼女の香りだけがした。

俺の香りが染み付いた、いつものルルの香りが…





   君の香りも俺に染めよう


 

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あきゅろす。
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